第9話

ああ、嫌な事を思い出した。最悪だ。

めくるめく思考を研ぎ澄まそうと試みるが、なかなかそれが出来ずにいる。脳に靄がかかる。脳がスポンジを握りつぶすかのように矮小化されていく。分からない。分からない。俺はいまどこに。何を考えて、どのようなことがしたかった。

分からない。分からない。

母校に行きたかった?そんなわけはない。

散歩?そんなガラじゃない。

気分転換?散歩じゃねーか。

他人に懇願されたから?あ、そうか。

ウルズルに頼まれて俺は、来たのか。

白銀の世界は、脳内のように思える。

よく分からないが、意識というものはどこへ消えゆくのだようか。

最近、原子世界から戻ってくる描写のある映画を見た。

その手の学問に対しては白痴だが、人である意識を保ったまま、原子世界へ突入したらどうなるのだろう。自我が保てなくなり、自己と世界が乖離したような感覚になるのだろうか。

そうだとしたら、今、この現状と変わらない。

俺も、社会という名の世界と乖離しているからだ。

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