第6話 真実そして感謝

 ナホミは試練を終えユージィを連れて村まで帰還した。

 帰り道でも何も問題なく帰ることができ、ナホミはゾックがいなければ安全なのだと思ったことだろう。

「ただいま帰りました」

「おや、息子が」

「はい、ユージィが試験官とは驚きました」

「いや、そんなこと頼んだ覚えはないんだがな」

 ユージィの真実に驚くかと思いきや、

「村長!これで魔法使っていいんですよね」

「ああ」

「やった」

 試練達成の褒美、『魔法の解禁』への思いでいっぱいでユージィについては聞いていなかった。

 ユージィは勝手な行動をしたことによって親である村長のジィジィからこっぴどく怒られた。


 一ヶ月後。

 やってきたのはハナだった。

 村を散歩中に遭遇したナホミは一瞬体を固めてから近づいていった。

「どうしたんですか?」

「村長さんを探しているんです~」

「村長ですか? 待っててください。呼んできます」

「ありがとうございます~」

 ナホミは走って村長の家まで呼びに行き、ユージィも連れてハナのもとまで戻った。

 試練突破により魔法が解禁されたことでナホミは移動術も使えるのだが、威力や規模の問題で村内での仕様は他の村民同様禁止されているのだ。

「連れてきましたよ」

「ありがとうございます~」

「なんですかな、ハナさん」

「完成しました~」

「本当ですか?」

 そう、ハナは先日行われたナホミの試練の最終目的の達成を村長に告げるためにやってきたのだ。

「結果はどうですか?」

「もう万全です~」

 もともと村長の企みとして村民を増やし税収を増やしたいこと、盗賊を撲滅することがあり、国営やばい研究所の目的に世界平和に関する事柄があることから二つの意志がマッチしてナホミの試練の内容となったのだ。

 それは、

「こんにちは、私はゾックです」

 ハナの背後の箱から出てきたのは元の形の面影が一つもないゾックと名乗る人物だった。

「おお」

「え? これがゾック?」

「そうです~」

「そんな」

「すごいですな」

「そうでしょうそうでしょう~」

 ゾックと名乗る人物は挨拶を終えると村の入口にあった箒を使い掃き掃除を始めた。

「おおぉなんと」

「でしょう~でしょう~」

 その後も話し続ける村長とハナから離れたナホミはユージィに心情を話しだした。

「まさか、あんなことの手助けをしてたなんて」

「……すまない」

「ユージィは悪くないでしょ?」

「俺はナホミを止められなかった」

「そうね。止めようとしてくれたんだ」

「ああ」

「これを見させないために?」

「そうだ。だが、力が足りなかった」

 そう言い、俯いたユージィだったがナホミは軽蔑することはなかった。

「優しいね」

「え?」

 思いもしなかった言葉をかけられたユージィは驚きでナホミを見た。

 そのユージィに何が起きたかはナホミとユージィだけの話。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

少女と試練とステートラン 川野マグロ(マグローK) @magurok

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ