第4話 遭遇そして対峙

 ナホミは荷台の中でどれだけの時間が経っただろうと思った。

 ナホミの乗る荷車の荷台は外から中が見えないようになっているうえ、中からも外が見えない。

 荷台のため、普通なら問題ではないがナホミにとってゾックの接近を警戒できないことが緊張感を募らせていた。

「大丈夫ですよ~」

「そうですよね」

「はい~あれだけの火炎は見たことありませんから~」

 そこで、ナホミは荷車の減速を感じとった。そして、しばらくして停止した。

「どうもすみませんね」

 などという話し声が荷台まで届く、

「ゾックですか?」

「わかりません~」

「そんなぁ」

「ただ、ゾックなら~」

「ちょっと中身を確認させてもらってもいいですかね」

「はい。どうぞ」

「では」

「ぎゃああああ」

「あははははっは」

「え!?」

 そこまでは穏やかだった会話に突然運転手の絶叫が混じった。

「ゾックなら運転手に命はありません~」

「それ早く言って」

 ナホミは荷代から飛び降り、足へ向けて電撃を放った。

 今までのゾックの犯行でわかっていることは、ゾックは対魔法繊維をまとっていること、運転手はいなくなっていること、つまり、布と荷車しか残らないということ。

「ぐああ、ふー」

「よし」

 電撃は地を這いゾックの足めがけて一直線できらめいた。そのきらめきは人の目で追うことはできず、ゾックは躱すことができなかった。そして、電撃はゾックの足を焦がした。

「捕縛術」

 ナホミは続けて動けなくなったゾックを捕縛した。

「治癒術」

 ナホミの即時の判断と行動によって無事運転手は一命をとりとめた。

「さすがですね~」

「ありがとうございます」

「こんなに早くゾックを捕まえられるとは思ってませんでしたよ~」

 ハナはそれだけ言うと運転手に指示を出し国営やばい研究所を目指して再び進行が再開された。

 ナホミとしては、ゾックが思っていたよりも手応えのなかったことにより大きくモチベーションを低下させていた。

 ただし、警戒を解いたわけではなかった。

 それは、ゾックはナホミの電撃を受けて足が使い物にならなくたった状態でも意識を保ち冷静にナホミの命を奪おうとしてきたからだった。

 自分の魔法に自信はあれど人を相手に使う練習は今までしてこなかったナホミにとって今の状況は複雑だった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る