第37話 ダブルデート 十
「森川さん、今日、楽しかったですか…?」
次の行き先に向かうレンタカーの車中、僕はそんなことをつい口走る。
「え、あ、はい、もちろん楽しかったですよ!」
森川さんはそんな僕に驚きながらも、そう言う。
『嘘だ…。森川さん、今日の僕を見て、がっかりしたに違いない…。』
僕はそんなことまで思ってしまうほど、落ち込んでいた。
『今日の僕、森川さんにアピールするどころか、逆にマイナスな所ばっかり見られてるような気がする…。
これじゃあ、森川さんと付き合うなんて、夢のまた夢だ…。』
その時僕は、そんな風に思った。
そして次の行き先の駐車場に着き、僕が車を停めた時、森川さんが口を開く。
「豆田さん…?」
「は、はい!」
「訊かないんですか…?」
「え、何を?」
僕は森川さんが何を言っているのか分からず、そう訊き返す。
「…前に言ってくれたことの、私の答えです。」
「こ、答え。ってことは…。」
そこで森川さんが何を言っているか僕は分かり、ハッとする。
そこから僕は、饒舌になる。
「あ、前の告白の答えですね。
いいんです森川さん!僕なんか、森川さんの眼中にないですよね。そうそう、森川さんには、達紀、時川達紀みたいなおしゃれで頼りがいのある人の方が、彼氏にふさわしいと思います!ま、まあ、達紀には彼女がいますけど。まあ、とにかく、僕の告白なんか忘れて、幸せになって…、」
「いいですよ!」
そんな、何をしゃべっているのかさえ分からなくなった僕を、森川さんが大きな声で制止する。
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