第36話 ダブルデート 九
そして、僕たちは食事をしながら話をする。その時に森川さんが、
「そういえば、時川さんも、珍しい名字ですね!」
と言い、
「そうですよね!ま、地元では多いんですが…。」
と達紀が森川さんに返す。
『前に森川さん、僕の名字に対しても同じようなこと言ってたな…。』
その時僕は、達紀に軽くジェラシーを抱く。
そしてその瞬間、そんな自分が嫌になる。
つくづく僕は、情けない人間だ。
また、
「時川さんと貴子さんって、どうやってお付き合いするようになったんですか?」
と、森川さんが訊くと、達紀は自慢げにこう答える。
「あ、俺たち、おんなじ学部なんです。それで、お互いにお互いを気にするようになって…。それで気づいたら、両想いになってました!
ま、告白したのは俺からなんですけどね!」
「へえ~いいですね!
私もそういう出会い、憧れるなあ~!」
そう言って森川さんは、また笑顔を見せる。
その笑顔もまぶしくて、僕の心は少し苦しくなる。
また僕は、
『僕は森川さんにとっての、そんな『出会い』の人になれるんだろうか?』
というようなことを、ふと考える。
「…おい翔真、聞いてる?」
…どうやらそのまま僕は、少し物思いに耽っていたみたいだ。
「あ、ご、ごめん…。」
「すみません、こいつちょっと天然な所がありまして。」
そう達紀はみんなに対して言う。そして、僕はさらに赤面する。
そして、そんな僕を森川さんはクスクス笑いながら見つめる。
『ああ最悪だ…。これ、絶対マイナスポイントだ…。』
僕はそう思うが、ここで落ち込んでしまうと状況はさらに悪くなる、僕はそう思い直し気持ちを何とか切り替えようとした。
そして、4人が食べ終わり、僕たちは(今度は達紀の提案の下)次の行き先に向かった。
また、そこから先はそれぞれ、2組ずつで別行動をとることになった。
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