第10話 プロローグ 十

 「痛ぁ…。」

僕は少しの間、横になってしまっていたみたいだ。気がついた僕は、とりあえず周りの様子を確認する。

 『とりあえず、周りに誰もいなくて良かった…。』

もし誰かがいたら、助けてはくれたかもしれないが、相当恥ずかしい思いをしたことだろう。

 そう、命に別状があるわけではないのだし、こういったことは、そっとされるに限る。

 僕はそんなことを思い、ちょっと笑えてきた。

 『さ、家に帰るか…。』

そう思って立ち上がった瞬間、僕は周りの異変に気づいた。

 『あれ…?』

 まず、空気がおかしい。僕はそういったことに敏感な方だと自負しているので、すぐに分かる。確かに気温は僕が転ぶ前と変わらないかもしれないが…この空気感は、春というより秋だ。

 その後、そのことが気になった僕はとりあえず、大学の方まで歩き出した。

 そして、近くの人に、質問をする。

 「すみません…突然で申し訳ないですが、今日って何日でしたっけ?」

「えっ…今日は10月1日ですよ。」

「すみません…あと、何年の10月1日ですか?」

「はい!?2017年ですけど。」

「あ、分かりました。ありがとうございます!」

その人は怪訝な表情をしていたので、恥ずかしくなった僕はダッシュでその場を走り去る。

 その後、僕は大学のキャンパス内に入ったが…その中のカレンダー、掲示物を見ても、そこには「2018年3月」の痕跡はない。

 あるのは、「2017年10月」ということを示す、痕跡だけだ。

 『これは…夢!?』

そう思った僕は、一応ほっぺをつねってみたが、普通に痛かった。

 そう、それは夢にしては、あまりにリアル過ぎた。

 『こ、これって…。』

その後僕はキャンパス内を歩き回り、僕の友達にも会った。そしてさっきと同じような質問をして、

 「なあ翔真、お前寝ぼけてんの?

 今日は2017年の10月に、決まってんじゃん。」

と言われ続けた。

 そして、実はSF小説も好きな僕は、あることを悟った。

 僕は土手で転んだ瞬間に、「2017年10月1日」に、タイムスリップしてしまった。

 

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