第9話 プロローグ 九

 そうやってその時の僕は、行くあてもなく大学の近くの並木道を抜け、川沿いまで来ていた。

 そして、その川の土手の所で、何をするわけでもなく立ち止まった。

 『そうだ。こんなに苦しい思いをするなら、僕と亜紀は最初から逢わなければ良かったんだ。

 そうすれば、僕たちはもっと幸せになれたのかもしれない…。』

 そう思いだしたら歯止めのきかない僕は、その考えが自分の頭・心から溢れてくるのを止めることができず、泣いた。

 その涙は目の前の川の水量よりもはるかに多いように、その時の僕には感じられた。

 『でも、こうしていても仕方がない。

 とりあえず、家に帰ろう…。』

僕は、その後家路へつこうとした…その時。

 僕は不覚にも、その土手でつまずいてしまった。

 そして僕はしばらくの間、気を失ってしまった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る