第2話 視察団


街のゴミ溜めにきたラフィー。


今日はここでゴミ拾いだ。

ここではペットボトル・缶・瓶などのリサイクルが効くものや、金属片や基盤などの金属類などを主に拾い、街のリサイクル商に買い取って貰っている。


「今日はちょっと稼ぎたいな……」


最近は大きな戦闘等はなく、車の残骸や壊れた銃機はあまり運び込まれてこなく、生活ゴミや使えなくなった家電などがここに持ち込まれる。

そして、今日は回収車がこのゴミ溜めにゴミを置きに来る日だ。


もし、家電を見つける事が串焼きが10本は食べれる金額になる。

ただ、ラフィーはまだ10歳、身体はガリガリに痩せ細っている為、大きな物はあまり狙えない。なのでラフィーは大物は狙わず、広い視野で細かく金になりそうなものを拾っていく。


ペットボトル×15

プラスチック皿×20

缶詰の蓋

調味料の瓶

酒瓶×4

瓶の蓋

陶器の瓶


この量だけでも、10歳のガリガリの身体には辛い。ラフィーは全て拾った布袋に詰め、ゴミ溜めを後にする。


ラフィーは、ゴミ溜めから1kmほど離れたリサイクル商に着いた。


ラフィーゆっくりと店の中を覗く。

薄暗く、店の入口から入る日差しで照らされた店内には左右と中央に什器が置かれ、電化製品や携帯、茶器や雑誌など乱雑に棚に置かれている。

その為、店の余計店内は暗い雰囲気を醸し出していて、ラフィーは少し苦手にしていた。


「こん…にちは……」

「ぉ…ぅ、ちょっと…待ちなー」


店の奥の方に向かい声をかけると、店の奥の板の間から声が帰ってくる。

店主が身体を起こす。


店主”ジョブリス”。

このスラムで何件かあるリサイクル商のオーナーだ。名字はしらない。

ここのオーナーは、こんな子供でも真面目に相手し、取り引きしてくれる数少ないまともな大人の一人だ。


「…うっ、んぁあ!……おー、ラフィーか。今日は何を持ってきたんだ?」

「いつも通り、ペットボトルと瓶。あと皿ぐらい」

「あいよー。見してみな」

「うん、これ」


ラフィーは、受け付けのテーブルに持ってきたものを袋ごと置いた。


「あー、やっぱプラスチックは少ないかー」

「うん、まぁしょうがない。その辺はすぐ取られちゃうから」

「まぁでも、瓶が多いのはよかったな!」

「うん、とりあえずは」


ジョブリスは今回の査定をどんどん進めていく。プラスチックはリサイクル製品に幅があるため買取料が高い。逆に瓶などのガラス製品は、輸送費や加工費がかさむ為買取料は低い。ただ瓶は時々『ばける』ことがある。古い酒瓶や元値が高い酒の瓶などは瓶自体が高級なことがあり、ひと瓶で日本円で30万、ヘタしたら200万という金額になる事もある。


そういったものはなかなか見つからないが、瓶を拾う時はそういった事も期待してラフィーは拾っている。ちょっと前に1回『ばけた』て日本円で4000円になったことがあったが、おじさんにすぐ取られてしまった。

それに最近はゴミ溜めに行く時間が遅いため、良さそうなものは先に拾われてしまう。


「おし、終わったぞー」

ジョブリスは10分ほどて査定を終えラフィーを呼ぶ。


「今回、ちょっとだけ『ばけた』ぞ?ラフィー」

ジョブリスはニヤけながら伝えてきた。


「本当に?」

「あぁ、ちょっとだけだけどな?」


そう言ってテーブルの上に1本の瓶を取り出す。

「今日お前さんが持ってきたこの陶器の瓶、古酒の瓶なんだが本来は木箱に入るようななかなかの高級品の瓶だ。傷がある分値は下がるがいい額だぞ?」


…ゴクリ

これを聞き、ラフィーは緊張して唾を飲む。


「…で、いくらになりましたか?」

「聴いて驚け……、517リヤルだ!!そして他と合わせて690リヤルだ!!さぁー持ってけー!」

まとめた札束をドーン!とテーブルに叩きつけてニヤニヤ笑うジョブリス。


517リヤルは日本円で約15000円、690リヤルは約20000円だ。

これだけあれば、食い詰めれば半年は何もせず過ごせる金額だ。


ラフィーは久しぶりの当たりに目を瞬かせた。


「本当に…いいの?」

「お前さんの努力の賜物だ!いいんだよ!これで美味いもん食ってこい!」

「うん!」


ラフィーは、ジョブリスに年相応の笑顔を見せ、お金を受け取ると小走りで外に向かう。

その後ろ姿を微笑みながら見ていたジョブリスは、ふとある事を思い出す。


「そういえば……おーい!ラフィー!今日はあんまり中央には近づくなよ!」

「っつ、え?どうして?」

「確かぁ、今日は首都からお偉いさんが視察に来てるって話だ。もしお前さんがその人らに目に付いたら、何されっか分からんからよ」

「あぁー……わかった。気をつける」

「おう!んじゃまたな!」

「うん、また!」


今度こそラフィーは店を後にする。



************


その頃、このスラム街の中央と呼ばれる昔の栄華の跡地に、今のこの街には似合わない黒塗り四駆の高級車が1台、護衛車が4台隊列を組みながら停車した。


「到着致しました。ここが次期開発区です」

「ここがそうか。ありがとう」

「直ぐに見て回りますか?」

「いや、逆に少し走らせてくれ。街を見てみたい」

「分かりました。では、少し回りましょう」


視察団の1団が今、到着した。



***********


そしてラフィーは、中央にほど近い美味しそうな匂いの漂う商店街に足を向けていた。

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