第3話 噓つき
「子供は何人ほしい?」
あおいと付き合って3年が経つ。
デートやお泊りをすると度々将来の話をした。
「子供は2人かな?」
「その前に、子供の前でニンジン残したりするなよ?」
あおいはニンジンが嫌いだった。
「子供にはバレないようだいすけに渡す!」
「ダメです。食べる練習しましょう」
じゃあ、おいしく料理してねという具合で、常に2人はこれからも一緒にいることが前提の会話をしていた。
・・・・・・・・・
「ずっと飲み友でいようね」
お酒を飲みながら楽しそうに語るひかり。
「ずっと」とか「永遠」という言葉が嫌いだ。
その言葉の裏には“嘘”が潜んでいるような気がするからだ。
高校時代に1年半付き合った彼女もそうだった。
「私からは絶対に振らない。ずっと一緒だよ」
「束縛して?ずっと私だけ見てほしいし独占してほしい」
結局、その子には束縛が原因で振られた。
そんな言葉、信じる方がどうかしているのだろう。
あの頃、「ずっと」が前提だった自分は消えてしまった。
今では疑うことしかできなくなった惨めでかわいそうな自分が残った。
「だいすけく~ん、お酒止まっているよ」
「あ、ごめんごめん」
本当においしそうにお酒を飲む。
この時間が「ずっと」続けばいいのにと、「ずっと」が嫌いなくせにそれを心底願った。
たぶん、ひかりが好きなんだ。
別れて1ヶ月だが、その間寄り添ってくれたひかりに心奪われた。
ひかりも事あるごとに会いたいと言ってくれる。
「次はだいすけくんの家で鍋しながら宅飲みね」
本当に飲むのが大好きなやつだ。
まあ、断ることもないのだが。
後日
「私、具材切るからだいすけくん食器とかお願い!」
「はーい」
案外、家庭的だなとちょっと感心した。
「おいしい~!!」
本気で言っているのか疑いたくなるくらい良いリアクションをする。
「ほら、だいすけくんも」
大きな瞳と横顔がきれいだ。
「箸止まってるよ?」
透き通った白い肌。
「お酒も進んでないぞ!」
柔らかな少し厚めの唇。
「冷めちゃうよ~」
愛おしい。
「好きだ、ひかり」
「え…」
さっきまではしゃいでいたひかりは固まってしまった。
「それは、傷心中だからだよ…」
「違う、ひかりが好きなんだ」
黙ったままだった。
言うべきじゃなかったのかもしれない。
「ダメだよ…やっぱり…」
何がダメなのだろう。あれだけ求めておいて。
頭の中がぐちゃぐちゃになる音がした。
「とりあえず、飲もうよ!」
そう言って、何事もなかったかのように飲み始めた。
この日はよく飲んだ。
2人でビール6本、チューハイ4本、焼酎1升…あとは覚えていない。
「今日で一緒に飲むのは最後だね…」
ひかりは私のことを抱きしめながら耳元でそう囁いた。
ほら、やっぱり「ずっと」なんて嘘なんだよ。
飲みすぎとは別の吐き気に襲われながら、布団に深くうずくまった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます