第3話

新一は、ジュエリーSHIMAの入り口から左奥の金庫とそこに立つ美人を眺めた。

その美人刑事が入り口で新一を足止めした若い警官に声をかけた。

「あ、入ってもらって。金庫の専門家だから。」

警官は、新一の姿を上から下に眺めた後で体を引いた。新一は一歩店内に入った。

「お電話いただきました。「鍵のサナダ」です。」

新一は、悪びれずに事実を伝えた。この美人刑事からの電話依頼に応じて出張してきたのだ。仕事着のつなぎと解錠用の道具箱をもっち、だれが見ても鍵屋の新一である。


新一はできるだけ金庫を見ないように美人刑事と目つきの鋭い鑑識員のそばまで歩いた。

「ありがとうございます。依頼した松島朋子です。」

「開ける鍵はどこでしょう。」

「この金庫開けてほしいのですが。」

新一はいぶかしそうに言った。

「冗談でしょう。もう開いてるように見えますが。」

朋子は笑顔で言った。目は笑っていなかったが。

「今から閉めますから。」

驚いたように朋子を見る勝田のまえで、彼女は手早く金庫を閉めて鍵をかけた。

「花屋のおばさんが言ってましたよ。小さいころからどんな金庫も開けられた天才だって。」


あのばばぁ。道理で最新鋭の金庫とか詳しすぎると思ったんだ。

新一は空いた手で頭をかきながら、金庫と朋子を交互に見つめた。

「子供の遊びですよ。こんなたいそうな金庫は開けたこともありません。」

「犯人だと疑っているわけじゃないので安心して。開けられない金庫なのかどうか専門家の意見を聞きたいの。真剣にね。」

朋子は笑顔で言った。今度も目は笑っていなかったが。

新一は朋子の目をじっと見た。本当に真剣なのか推し量るように。


最後に新一は小さく首を振った。

「開かなかった時のために、時間給にしてもらっていいですか。」

「わかりました。じゃぁ二時間で。」

朋子は満面の笑顔で言った。

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