第11話 予感
月曜、朝。
うー。
2日連続だ。体が重てぇ。目覚まし時計が鳴っても起き上がれずにいた。目を瞑っては時計を見て、目を瞑っては時計を見て。15分経って、ようやくそのループから抜け出す。
「夜更かしも大概にしろ」
母に言われたが、俺は今日も出掛けるだろう。俺は楽しくなっていた。今度は何が起こるのだろうか。おじいさんが言ったことは気になるが、寝て、起きると次のイベントへの好奇心が俺を完全に支配していた。
リビングのソファーに座り、テレビを見る。清純なイメージで売り出していた女優が不祥事を起こしていた。変化、いろいろ向き合う・・・。昨日のおじいさんの発言と、ブルースの様子を思い出していた。ナイスになるってなんなんだ。向き合うってなんだ。我慢していたもの、偽っていたなにかと向き合うということなのか。
「そのうち、俺も・・・」
そんな矢先だった。
「あ、泰樹ー。今日お父さん帰ってくるから」
俺はソファーから飛び上がり、母に駆け寄った。
「え?ちょ、こんな時期に?急すぎるでしょ」
「しょうがないでしょ、あんたもいちいちつんけんせずにお父と仲良くしなさい!」
まだ再会してもいないのにドッと疲れが押し寄せた。俺と親父は水が合わない。今まで何度も話合ってきた。でも俺と親父の間で、その姿勢に大きな差があった。
親父は強い人だ。その生い立ちも知ってる。でもその強さ故だろうか。家族には目もくれない。母が熱で倒れたときも、俺が小学校の作文コンテストで入賞したときも、どんなときも自分を優先した。仕事に行って、休みになったら飲み会、パチンコ・・・。帰ってくれば「おい、テストはどうだ?」「おい、進路はどうするんだ」「そんなことでいいと思っているのか?」。俺には父ではなく、会社の上司だった。母はそれでも父に優しい。
そんな親父が帰ってくる。先ほど考えていたことが頭をよぎる。
「向き合うときがくる」
俺にはとても重すぎる。暗い予感を背負って、仕事に出掛ける準備をした。
音 たいぶん きみよし @taibun-kimiyoshi
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