第6話 老人

 歯がかちかち震えていた。怖い人に絡まれる。もしかしたら人によってはよくある話で、大したことないと思うかもしれない。でも俺には初めての経験で慣れていない。早くタバコを吸わないと。


 俺は別のコンビニに入った。店頭の灰皿のそばにおじいさんがいるのが見えた。普通の人そうだし、大丈夫だろう。俺は車を止め、灰皿に向かった。おじいさんとは灰皿を挟んだ位置にポジションをとる。


 ふぅ・・・。


 やはり落ち着く。世の人は悪く言うかもしれないが、小心者の俺にはこれがないといろいろと間に合わない。ちらっとおじいさんの方を見る。空を見上げ、煙を勢いよく吹いていた。紺の上着の下はシャツにセーター、スラックス履いている。服装には清潔感があり、優し気な顔をしている。

 しばらくしてからだ。

 おじいさんが話しかけてきた。

「おにーさん、大丈夫?」

「あー、はい、大丈夫っす」

 心配してくれてる。なにせ手と足の震えがまだ止まっていない。じっとしていられず、挙動不審だ。様子がおかしいのは明らかだろう。おじいさんは穏やかな雰囲気で、俺は余裕がなく、早口だった。しばらくしてまた話しかけてくる。

「いくつ?」

「あー26っすねー」

「あーそうー」

 その後、何を話すわけでもなかったが、なんだか心が落ち着いてきた。多分このおじいさんの影響だ。根拠はない。ただ、そばにいるとなぜだか安心感が生まれる。

 そのうちおじいさんが灰皿にタバコを押し付け始めた。帰るのか。その去り際

「明日から毎日鳴るよ」

 と言われた。え?と思ったが、おじいさんはそのまま歩いて帰ってしまった。どういうことだろう?分からないまま俺は2本目に火をつけた。

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