第三章「革命家は笑う」-その4
自分の不手際で状況を最悪まで持っていってしまった禊は、内心焦りながら2歩後ずさる。
「ちょっと嘘のつき方が子供騙しすぎましたかね?」
「俺の存在自体がイレギュラーみたいなもんだったんだろ? 口から出まかせにしちゃ十分だろ。さっききっちりとぶっ飛ばしておくべきだったぜ」
「でも、空調管理室にマンホールがどうだのってのに嘘だという証拠はないと思っていいましたが」
「そんな逃げ道にも進入口にもなるもん、よくよく考えたらこの学校が生徒にも知らせずに置いとくとも思えねえ。セキュリティの問題だしな」
柳は右手を後ろに回したかと思うと、ナイフを取り出し葵の首筋にあてた。思わす葵が声を上げる。
「ひっ!」
「月並みな表現ですが、一応。そこを動かないでください」
「わかってるよ。第一こっちは丸腰だ。この状況をひっくり返せるとは思ってねえよ」
「魔法は脅威ですからね。一応言っておきますが私は魔素の流れが見えます」
「超魔核がそっちにいるのか。まさか奴隷根性がここまで過ぎる奴がいるたぁな」
「今のうちにこっちについておけば、上から見る立場に立てますからね。あなたも今のうちなら雇う口がありますよ?」
後ろから3人の武装した男が現れる。彼らは柳の後ろにつくと、禊に銃口を向けた。
「そりゃお仲間なんだもんな。争わなけりゃ音もたたねぇわ」
「まあそう敵対視しないでください。貴方のことは優遇させてもらいますよ」
「この一連の合間に一体どんな採用ポイントがあったんだ? 大したことはしてねえはずだが」
「いや、咄嗟に見せた洞察力、お見事ですよ。あまり自分を卑下なさらないでください」
「お褒めに預かり光栄、とでも言えば満足か? 悪いが兵隊の真似事させられるようなブラック企業はまだご勘弁だ」
「そうですか。仕方ありません」
「殺すか?」
「いえ。逃げてかまいませんよ。案内しましょう。貴方達、道を開けなさい」
柳がそう言うと兵は銃を下ろし、入り口への道を片側に寄る。
「人質は十分ってか?」
「ええ。貴方ほど賢い方には、捕まえているときに何かされては困りますからね。であればとっとと追い出そう、ということです」
柳は腹が立つほど完璧で美麗な笑みを見せる。保食葵はえもいわれぬ顔をして口を開く。
「片喰くん……」
「悪いな保食。言っていたと思うが、俺は自分の生存を最優先する」
「別に君が気に病むことではないよ」
「そうか。ありがとう」
今生の別れにしては少し短い会話を終えると、二人は満足したと言わんばかりに沈黙する。
「良さそうですね。貴方は彼を入り口までお連れしてください」
そう言うと柳は葵を連れて、廊下を歩いていった。
「両手を頭の後ろに回せ」
後ろから銃を突きつけられ、禊はあっさりと手を挙げる。
「行け」
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