なるべくしてなった悪役令嬢だけど私は辞退させていただきます
音無砂月
第1話
私の名前はヴァイオレット・レオパール。
すみれ色の髪とルビーをはめ込んだような深いワインレッドの目をしている。
もう分かっていたいると思うけど私の名前は髪の色からきている。
なんとも安直な名前だと思うだろうけど仕方がない。
それだけ私はどうでもいい子供だったということだ。
私の母は踊り子だった。とても美しい人だった。
美人。それは、それだけで不幸を呼ぶ。
私の母は美しかったせいでレオパール公爵に見初められて無理やり愛人にされた。
そしてできたのが私だ。
好きでもない男に強姦されてできた子供など誰が好きになるだろう。
母は当然のように私を嫌っていた。見るのも嫌だと言うような態度だ。
元踊り子の母を使用人たちは見下していた。
時々、レオパール公爵に無理やり連れていかれたパーティでもそれは同じ。
貴族社会なんて知らないし、マナーなんてもっと分からない。
周囲の人達は母の粗探しをしては嘲笑った。
次第に父もいつまでも心を開かない母に愛想を尽かしていった。
正妻からのいじめもあった。母の心はもう限界だった。
ある日、母は自室で首を吊って死んだ。
ゆらゆらと揺れる体は華奢で美しかった艶のある髪は枯れ木のようだった。
飛び出した目は空虚で、怖かった。
「最初から最後まで迷惑な女ね。他所で死んでくれればいいのに」
とは正妻の言葉。
「邸内で自殺など体裁が悪い。病死で片付けておけ」
レオパール公爵は使用人にそう命じていた。
「邸内で死体が出るなんて、嫌だわ。不吉ね」
「どうしよう。夜になって愛人様の幽霊が出てきたら」
「嫌だ。止めてよね。私、そういう話苦手なのよ」
と、使用人たちは母の遺品を片付けていた。
何も変わらない。
母が死んだのに涙を流す人もいない。
変わらない日常がそこにはあった。
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