第8話
地面を靴の先でほじくる。刈られたばかりの芝が絨毯のようにめくりあがった。庭の管理をしているおじさんの顔が思い浮かび、出来るだけ元の形に戻そうとした。しかし、完璧に元通りになりはしなかった。何も考えず馬鹿なことばかりしている男の子のようで恥ずかしくなった。
私の隣に立っている男の子は左右別々の靴下を履いている。
昨日、私は彼の靴下を隠した。
洗濯を手伝っていいた。優子が運んでいる籠から一枚の靴下が落ちた。私はそれをポケットに押し込み、持て余した挙句、菜園に埋めた。理由はない。下らない悪戯だ。
今朝、大泣きしている彼に優子は必死に謝っていた。彼女まで泣き出しそうになっていた。その時、私は少し得意だった。
彼は背中に木の棒を当てているかのように、真っすぐ背筋を伸ばして立っている。彼の向く方向に菜園がある。そして、その中の薩摩芋の畝に大切な靴下が埋まっている。
私達と菜園の間をバスが砂埃を上げながら通った。窓から新しい仲間となる子供達が顔をのぞかせている。バスはゆっくりと進み、ブレーキを鳴かせて父の前で停まった。ぞろぞろと子供達が降りてきて、順番に父と握手をして行く。子供達の表情を見てると、彼らが羨ましくなった。今までの人生の中で、あんなに興奮したこと、私にあっただろうか?
私は堂舎を見上げた。何とも思えなかった。
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