第21話 シャルの決意

「尊敬する人を殺した――だけでは理由ではない。言いたくないのなら、これ以上何も言わない。悪いことをしたな」

「……シャルさんはどうして仲間の敵討ちを討とうとしているのですか? 前に船で話していたとき、あなたの感情は仲間の仇を討つや宝を取り返すような目つきじゃなかった。その理由を聞かせてもらってもよろしいでしょうか」

「!」


 シャルは俯き、ゆっく言葉に出した。


「魔眼」

「!」

「私の故郷を襲われた理由だ」


 魔眼。生まれながら大量の魔力を瞳に宿したものを”魔眼”と呼ばれている。魔力の源+眼球=お宝だと表記されている辞書もあるぐらいだ。

 遥か古代の時代に失われた魔法や遺跡を起動する際に必要とする供物としても有名だ。


 魔眼は太古の昔に滅び、魔眼を持つ存在は千万人のうち一人ほどしか存在価値が危ぶまれるほど減った。生きる伝説だ。

 その存在をただ世間から守るようにして隠れるかのようにして結成されたのが、シャルの村だった。その存在は数千年経った今でも、世間に知られることはなかったはずだった――。


「シャルさん、その話を詳しく聞いてもいいでしょうか」

「魔眼は感情が高ぶると瞳が魔法陣となって浮かび上がる現象を指す。その状態で死ぬと、魔眼は魔法陣が褪せることなく瞳に刻まれたままとなる」

「それで”義眼”に襲われたわけね」

「……私は一度村に戻った。師匠から力を手に入れた後。私は今でも彼らの暗い瞳から語り掛けてくる。”無念”だと。私は”義眼”を捕まえる。そして取り戻すんだ。仲間たちの目を取り戻す、と」

「それがシャルさんの目的なのですね」

「そうだ。私はあの日からすべてを誓ったんだ。仲間を取り戻すって」


 少し羨ましいなと思いながらエルマは微笑んだ。


「なにを笑っている」

「少し羨ましいなぁと思ってね」

「羨ましいことなんてなにひとつも…! まさか…」

「私は志望動機や大義があるわけじゃないの。私の実名は明かせないけど、私を救ってくれたエルマ先生と親友のルゥから託された願いと祈り、失われた友のために”ウィッチウィザード”になって、”ペラペラ病”を克服する薬を探すの」


 ”ペラペラ病”。不治の病に数えられる原因不明の病気。人間の細胞、皮膚、骨、血管、神経のあらゆるが紙のようにペラペラになってしまう。痛みはそれほどないが、身動きが取れないことと、食べ物を摂取できなくなる飢えに苦しむようになる。


「まさか、君の出身って――」


 エルマは頷いた。


「私の出身は今では誰も寄り付かなくなったゴーストタウン。そして、私の友たちがいた町。話せば長くなるわ。走っていることだし、また今度にしない?」

「いや、聞かせてくれ」

「! いいわ…長くなるけど、途中でヘタレこまないでね」

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