第17話 試験開始!
腹を痛めていた親友はエルマの魔法と親友が調合した薬によって完治した。腹痛はテスト開始前で収まり、テスト中腹を下すながら受けるという最悪なパターンは逃れることができた。
「あぶなっかたぜぇ。助かったよエルマ」
「私ができることをしたまでです。それにしても調合と薬草の見分けといい…薬剤師を目指してはどうでしょうか」
「いや、俺の夢はまだ決まっていないんだ。だから、薬剤師とか魔法使いとか、その先はまた別で考えるよ」
親友は手のひらを前に突き出して断った。
自分の夢は自分で見つけると少年らしさをまだ持っていた。
そんな前向きに考えられる心を持つ親友をエルマはまぶしく、そして微笑ましいと感じていた。
ジリリリリリリ…大きなアラームが鳴った。スイッチを触れ、アラームを止めると髭を生やした男性が姿を現した。
紳士のような燕尾服を着ている。髪型はヘの字という変わった髪型だだ。
「ではこれより試験を開始いたします」
燕尾服の紳士が手のひらで「こちらへどうぞ」と案内するかのように誘導する。
「申し遅れましたが私、第一次試験担当官のヘノジと申します。これより第二次試験会場まで案内いたします」
ヘノジと名乗った試験担当者は人とは思えない速さでぐんぐんと先頭を突き放す。そのスピードは自転車から自動車、電車とスピードの速度を上げていく。ティノといい勝負だ。転移術のティノと対してヘノジは高速術といったとこか。
「二次っていうことは…一次は?」
「もう始まっています。二次試験会場まで私についてくること。途中の罠、迷路となっている道に迷うことなくついてきたものにだけ…第一試験の合格者と認めます」
ということか…このトンネルも魔法によって作られた迷宮(ダンジョン)。
迷宮(ダンジョン)――この世界では珍しくもない。古代人・現代人が構築した建造物であり、侵入者を妨害する迷路のことである。術者は多大なる魔力を糧に迷宮(ダンジョン)を作ることは稀であるが、迷宮(ダンジョン)造りを趣味にしている者もおるぐらい、迷宮(ダンジョン)は成長・お宝採取・ストレス解消などに使われやすい。
「このトンネルも迷宮(ダンジョン)ということか…」
シャルは呟いた。
「だから、魔力が流れる感じがどこかしらからも感じるのですね」
人から流れていた魔力だけでなくこのトンネル自体が魔法で作られた迷宮(ダンジョン)そのもの。魔力を感知すると正面だけでなく地下や天井、壁の奥にも感じるのはそれが原因のようだ。
「…なるほどな」
「持久力試験だな。体力と運動力などが試されているようだ…どこまでもついてってやるぜ」
親友は生き生きしていた。
(どこまで走ればいいのかわからない。精神力と体力面両方が削れるわけだな)
親友とは裏腹にシャルの不安は一線を拭った。
親友とシャルの横を統べるかのように通り抜けていく銀髪の少年ラルクの姿があった。
靴に車輪のようなものをつけている。ローラースケートだ。
「おい そりゃ反則じゃねぇーか オイ!!」
親友がくってかかった。自分は自らの足で走っているのに、ラルクだけが乗り物で移動しているのを見て、引き止めた。
「何で?」
ラルクは冷静に疑問を返した。
「何でって…おま、これは持久力のテストだぞ」
「試験担当者はただついてこいと言っただけだ」
ティノは親友に走りながら違反じゃないと伝えた。
「ティノ!! どっちの味方だよ!!」
「怒鳴ると体力を消耗するぞ。なによりうるさい。テストは原則として道具の持ち込み自由だよ。ジンだって、薬品やらいろいろ持っているだろ。もし反則なら、君の反則だよ」
冷静なシャルのツッコミに言葉も返せない。
「……ティノといったっけ」
「うん、そうだよ」
「年いくつ?」
「14!」
「同い年…ね」
「?」
高らかに飛び跳ね、身体能力を駆使して車輪の靴と普通の靴と履き替えた。
「かっこいいー」
ティノが目を輝かせた。
「改めてオレはラルク」
「ぼくはティノ」
「説教君の名前は」
「せっきょ…俺の名前はジンだっ! 覚えておけよ」
「ジン…ね。そっちはシャルとエルマだね。さっきの会話で聞こえているから」
シャルとエルマは省かれた。
五人となった仲間たちは後方で走ってはいるが、次第に親友の足取りが遅くなっていくのをティノは心配していた。
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