第12話 親友の罠
深い森の中、三手に分かれた一行は各自で捕まえるべく対処に追われる。
一人寂しく離れた親友は森の中で迷子になっていた。
「成り行きで飛び出したけど…俺、戦力外だったわ」
勢いで飛び出したのはいいけど。武器となる物も魔法もない。そんな自分が魔獣と戦えるのかと今更ながら自分に問い詰めていた。
「ジン…なのか?」
振り返ると汗だくで息が荒くなったティノがいた。
「お前、どうしてこんなところに!?」
「ぼく後を追いかけていたんだけど、ここに来たと思ったら君がいたんだ。ねぇ、見てなかったか?」
「いや、俺もいま来たばかりだ。残念ながら行方が分からなくてね」
「そうか…」
親友はそっとポケットから爆弾岩を取り出した。離れ島で採れる天然の植物。見た目は子供の手のひらサイズにしたキャベツに似ているが、葉をむくと爆弾になっている。岩の周辺から撮れることから、爆弾岩と名付けられている。
振り返るさま、親友は声にしていった。
「ねえ、覚えているか?」
「…なにが」
「あの日の約束を――」
あの日、俺達は互いに約束を交わした。この約束は俺達が許さない限りは話さないと約束していた。それを、お前は覚えているのかと問うているのだ。
「覚えているさ。俺がお前のことを――」
爆弾岩を片手にティノの頭に向かって押し込んだ。カチと音ともに爆発した。親友の手は防具手で装着していたのでノーダメージだが、直で爆発したティノはひとたまりもないだろう。
「な…なにを…」
姿を露見した。あの化け物だ。
燃えカス化のように黒く顔を染め、火花が散っている。爆弾岩の特性だ。この岩で爆発したものは赤く燃えるというよりも黒い煙幕を発生し、赤い火花を散らすだけ。こけおどし程度のものだ。
だが、ダメージは効いたようだな。
「なぜ、ぼくが偽物だと?」
「名前だよ」
「なに?」
「俺に名前で呼ぶのは、アイツとの約束を果たしてからだ。お前が俺に”ジン”といったときに、気づいた」
「なるほど…それだけで気づかれたわけか」
不敵な笑みを浮かべる。
好機・勝機(チャンス)とも言わんばかりにティノの皮を脱ぎ、真の姿を現した。脱皮のように脱ぐ姿は爬虫類とはまた違ったグロさが露見した。
「くっ!」
「これでお前を――」
ドーンと爆音とともに黒い煙が昇った。
化け物の足元に仕掛けてあった罠が作動したようだ。
「なっ……なぜ…だ!?」
化け物は宙に吹き飛び、態勢を崩す。せっかく脱皮して正体を現したのに、チャンスが逆転してしまう。皮を被った状態では武器である爪で攻撃はできない。爪で攻撃するために皮を作ったってのに…まさか見破られるとは思いもしなかった。
それだけではない。爆弾岩で脅すだけでなく地面にも罠を仕掛けていた。コイツはまさに道具使い。他の魔法使いのように魔力が感知できなかった。一般人だと、素人だと思っていたが、油断した。油断した結果、このありさまだ。
「俺は他の三人と違い魔力がない。そのため、俺は俺なりの戦い方で挑む。そう友と誓った。あいつは、魔法を教えてやると言っていた。俺は冗談だと鼻で笑ったが、今にして思えば、冗談じゃなかった」
地面に背中から激突する。激突したとき、鈍い痛みが走った。
ヌメヌメとしたものが背中に感じる。そして、それが薬によるものだと頭で理解したときには、激痛でのたうち回っていた。
「うぎゃあああ!! いたい、痛いィーー」
「俺は魔法を覚えることは断った。なにせ、あいつ自身が覚えた魔法を俺が覚えたら、アイツに申し訳なくなる。アイツの復讐のための力を俺が得るわけにはいかなかった。だから、俺は――」
リュックやポケットから謎の液体が入った薬瓶や小道具を見せびらかした。
「――道具使い(アイテムマスター)。離れ島で手に入れた素材を調合し、それを武器と使う。時には医療用の薬、敵を止める罠など。俺ができるのはこれぐらいだ」
他の薬や爆弾も使ってやろうかと近づいたときには、化け物は気を失っていた。
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