3枚目 偉い人

「偉い人」って、たくさんいる。

会社の上司とか、総理大臣とかはもちろん、エジソンとか野口英世もそう。先生もお医者さんも、掃除のおばちゃんも、夢に向かって頑張っているあの人も、人の役に立ってるあの人も偉い。

人によって見方は違えど、自分よりも偉い人って、数えきれないほどいる。


この間、勤務先で新卒の同期との研修があり、その中で会長の話を聞く機会があった。一言でいうと、偉そうだった。実際偉いんだから、偉そうなのは何の問題もない。何の問題もないのだが、なぜ会長は偉そうに見えるのか、そこに疑問を持ってしまった。


グレーのスウェットを着ていたら、だれがどう見ても絶対ただのおじいちゃんだろうし、バカボンのパパのような恰好をさせたら、だれがどう見ても絶対変なおじいちゃんだろう。そのおじいちゃんがただスーツに袖を通すだけで、そこには他とは違うオーラを纏った、超偉そうな”会長”が誕生するのだ。

その風格は、会長が偉いから帯びているものなのか、はたまたその風格を持っていたから、会長になったのか。「ニワトリが先か卵が先か」という問題と同じような感覚に陥った。


会長は、ただひたすらに、時間の許す限り(なんと3時間も!)、よくわからない話をした。自分が初めて就職したときの話、バス会社に転職した時のはなし、ベトナム情勢の話、誕生日にドローンをもらった話など。何を聞かされているのだろうと、そんなことを思ってしまう私は少し人よりもひねくれているなと感じたが、もうすこし脈絡のある、私たちに関係のある話をしていただきたいものだ。


ただ、そう思うと同時に、こんなとりとめのない話を、3時間も、20代半ばの大人に向けて話をする機会が一体どれほどあるのだろう、と思った。会長くらいじゃないだろうか、こんな話をつらつらと聞かせることができるのは。一体会長がこれまでどれだけすごい経験をして、どれほどたくさんの学びを経て、どんな背景で、これらの話を私たちにするまでに至ったのかは知らないが、3時間も自分の経験や思ったことを話せる機会が自分に与えられる日は、来るのだろうか…?


そんな人生を、歩んでみたいものだ。あなたの人生を好きなだけ語ってください、というオファーがあったときに困らないように、一生懸命,

なんとか生きていきたいものだ。


――――――――――――――――――――――――――――くしゃくしゃ、ぽい。

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