16話 ささやかなお食事(後編)/お風呂
僕がボロボロの食堂について紗友里さんに聞いたところ、こんな話だった。
アルーラ女学院には『お稽古』と言われる授業があるそうで、昔は食の道と書いて『
そんなこんなで雑談などをしながら朝食を食べ、寮の自室へと戻る途中に栞が今しがた気が付いたように言った。
「そう言えば、私たち昨日お風呂入っていませんよね?」
「ん? あぁ、そうだな。先に入ってきていいぞ」
確かに僕たち兄弟は昨日は疲れて、お風呂に入らずに寝てしまった。それでも栞からはいい匂いがしているから、お風呂に入っていないことなど言われるまで失念していた。
「いいえ、お兄様が先に入ってください」
▼ ▽ ▼
そんな会話から数分後、僕は脱衣所にいた。栞に「いいえ、お兄様が先に入ってください」と有無を言わせない力強さで、言われてしまったので先に入ることにしたのだ。
「まぁ、断る理由もないからな……」
僕はさっさと入ってしまおうと思い、自分の着ているワンピースに手をかけたのだが、女性ものの服とは何でこんなにも脱ぎにくいのだろうか……。
「ぬ、脱げない……」
普段着ていたTシャツなどは下から上に引っ張ればよかったのだが、このワンピースはそうはいかないようだ。それから5分ほど頑張ったのだが、強引に引っ張って破れたら困るので栞を呼ぶことにした。
コンコン。
(早いな!?)
ノックの音がした。きっと栞が来たのだろうと思い、僕は扉に向かって声をかけた。
「栞~これどうやっても脱げな……」
「え!?」
「あら?」
栞だと思って振り向くとそこには、白髪のお姉さんが立っていた。その表情には驚きを顔に出さない年上の余裕が見て取れる。しかし、後ろで結ばれているのはポニーテールだろうか? 詳しくはわからないが、それが大人の余裕とは裏腹にその女性がおしゃれに興味がある1人の女の子であることを強調していた。
「一番早く寮に帰ってきたと思ったんですけど、もう先に帰ってきてる方がいたんですね」
女性はそう言うと僕の顔を覗き込んできた。
「あら? 見たことない顔ですね。もしかして、………編入生の方でしょうか?」
僕が女性に顔を近くに寄せられドキドキしていると、栞が扉からこちらを覗いているのが見えた。
「え、えぇ。昨日から入寮しました姫宮由美です。よろしくお願いします。そして、向こうの扉でこっちを覗いているのが姫宮栞です」
僕はいきなりの女の子の登場に動揺していることを悟られないよう、社交辞令的にそう言った。
「え、えっと。姫宮栞です。よろしくお願いします」
栞は挨拶をするとやはり初対面の人は緊張するのか僕の後ろに隠れてしまった。
「由美さんに……栞さん。覚えました。私は生徒会長の
(あれ、生徒会長って確かレズって…………)
生徒会長と聞いて、紗友里さんが言っていたそんなことが頭の中をよぎっていくのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます