通常編続き

15話 ささやかなお食事(前編)

 食堂へ連れられた僕達を迎えたのは、沙友里さん特製の手料理だった。どれも見た目までこっており、1つ1つ丁寧に作られたであろう事が伺える。


「これはすごいですねお姉様……」

「え、ええ。確かにすごいです」


 紗友里さんは料理を見て固まってしまった僕たちを見ると優しく微笑みながら言った。


「そんな2人とも硬くならないで。それに和人君も……。今は寮生の子はここにはいないから女の子にならなくていいんですよ」


 そう言われた僕たちはずっと固まっているわけにもいかないので、朝食をごちそうになりながら話すことにした。


「そう言えば、紗友里さん言葉遣いが砕けましたね。何か心境の変化でもあったんですか?」


 僕は食堂で食事を始めてから真っ先に、先ほど抱いた違和感について聞いていた。となりで栞が「え!? それからですか!?」とでも言いたそうな顔をしているのとは裏腹に、紗友里さんは嬉しそうな笑顔で頷きながら聞いていた。


「ええ、だって初めて会ったときはまだ他人だったでしょ。でも、今は秘密を共有する中……、より深い仲のほうがいいと思うからね」


 紗友里さんはそう言うと照れをごまかすかのように視線をそらした。


「ああ、なるほど………、ん? 栞どうかしたか?」


 紗友里さんのそのしぐさに少しドキッとしていると、栞が少し離れたところから服の袖をつまんでいた。


「お兄様のばか………」


 栞が何かをつぶやいていたようだが、ボロボロの食堂について紗友里さんに聞いていた僕の耳には入ってこなかったのだった。


▼ ▽ ▼


 私はお兄様と紗友里さんが話しているのを少し離れて聞いていました。本当だったら私もあの輪の中に入りたいのですが……


(ですが……、昨日お風呂に入らず寝ちゃいましたが臭ってないでしょうか……)


 お兄様は気にしないかもしれません。それでも、もし『臭う』なんて言われたら……。

 そんなことを思うと私は2人の輪の中には入れませんでした……。


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