12話 妹ちゃん(お嬢様バージョン)と着替え
栞が洗面所に入っていった後、ずっと固まっていた僕は正気に返ると、取りあえず着替えてしまうことにした。
(えっと、どの服にすればいいんだ?)
僕たちが学院に編入するのは2日後の月曜日である。少し前に、ここでの生活に慣れてしまうため、入寮は早めに済ますことに決まっていた。それで、制服でいるのはおかしいので私服を選ばなくてはいけないのだが、なにぶん女の子用であるから男の僕にはどれを選べばいいのかわからない。なので、取り合えず一番上にあるものを選んだのだが……
(なんでこれスカートと上の服が繋がっているんだよ)
僕が正体不明の服に苦戦していると洗面所の扉が開き、スカートの裾をつまみながら恥ずかしそうな様子の栞が出てきた。
「お、お姉様。どうでしょうか?」
栞が見せてきた服は、シンプルな白のブラウスに淡いピンク色の乗ったロングスカートだった。栞の長い黒髪と落ち着いた雰囲気が相まって、まるでお花畑を散歩するお嬢様という感じだ。
「す、すごく似合っているし、可愛い。……ん、あれ? そう言えば、そういう爽やか系の服は持ってなかったよね?」
僕の言葉に栞は照れたように、はにかみながら答えた。
「ええ、持ってませんでした。でも、お父様がお嬢様学園に通うなら服もそういう服にすべきだと言っていたので……。えっと、お姉様の着る私服も私のと同じような感じですよ」
そう言って、栞は僕が手に持っていた服を取ると自分に合わせた。
「ほら、私の着ているのと雰囲気が似ていると思いませんか? って、もう約束の時間じゃないですか、こんなことを話している場合じゃないです。早く着替えて朝食に行きましょう」
栞が時計を見たのにつられ、僕も時計を見ると7時55分を指していた。確か、紗友里さんは8時ぐらいに食堂へ来てほしいと昨日別れ際に言っていた。僕は急いで栞に返された着方の分からない服をタンスにしまい、ぱっと目についた白色のワンピースを着ることにした。
「えっと、栞。じっと見られていると恥ずかしいんだけど……」
「姉妹なのですから気にしないでください! それより早く着替えて行きましょう、紗友里さんが待っています」
そう言って僕の方から目線を反らさない栞の必死さが少し怖かったが、僕は紗友里さんを待たせるわけにはいかないので気にせずに着替えることにした。
(これって逆セクハラじゃね……?)
頭の中でそんな言葉が浮かんだ……。
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