11話 一つになっちゃった……

「起きてくださいお姉様、もう朝です。今日から寮の朝食ですから遅れたら食べられませんよ」


 遠くから栞の声が聞こえてくる。僕は普段、寝起きはいいほうである。しかし、昨日の学院長との面談や入寮手続きで自分が思っていたよりも疲れていたみたいだ。つまり何がいいたいかと言うと、まだ眠い……。


「……5だけ」


「えっと? お姉様、5とはなんでしょうか?」


「あと5分だけ寝かせて」


 僕がそう言うと、栞は一瞬驚いたような顔をしたが微笑むように笑うと僕の願いを聞き入れてくれた。


「5分だけですよ。私はその間に着替えてくるので目覚ましでちゃんと起きてくださいね」


 栞はそう言うと、のタンスから服と下着を出して洗面所の方に向かっていった。


「……ん!? し、栞ちょっと待て。なんで僕のタンスから服を取っていくんだ?」


「え? それはお姉様のタンスしかないからですが……」


 そう言われて、辺りを見回してみると確かにないのだ。栞の使っているはずの家具が何1つも。


(そういや昨日は疲れて気にしなかったけど、この部屋って僕の部屋の雰囲気にそっくりだな……)


「なぁ、栞の家具はどうしたんだ?」


「え? 私の家具は家に置いてありますよ。そんなことより、時間がないので私は着替えてきますね」


 僕が漠然と固まっている間に栞は洗面所に行ってしまった。


(同じタンスを使うってことは、僕に下着や着替えを見られるってことなんだけど気付いているのかな……)


▼ ▽ ▼


 洗面所での着替え途中、私は先程の兄の態度について考えることにしました。


「はぁ、お兄様は何を焦っていたのでしょうか。今更貸し借りを遠慮する中でもないですし、………………は!? そう言えば、同じタンスを使うってことは私の服を見られるってことですよね」


 ちょっと恥ずかしいですけど、それぐらいどのみち着たら見られる物なので、私は気にせず着替えを続けることにしました。


(……って、下着まで入ってるじゃないですか!)


 私は途端に顔が熱くなるのを感じ、水で顔を流し熱を冷ました。


「うわ~ぁ、気にしてちゃいけません、気にしちゃいけません……」

(このままでは、お兄様に真っ赤になったところを見られてしまいます。そうしてきっと聞かれるんです。「どうしたんだ?」って……)


「うぅ、今更下着を意識していますなんて答えられるわけ無いじゃないですか」


 そんな口からこぼれた言葉に、私の顔は余計熱くなっていくのでした。


 




 








 

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