4話 初めての女装

「では、お兄様。いっしょに行けることも決まりましたし、そろそろ女装しましょうか?」


 荷物を詰め終え、朝食も食べ終わった後、何もなくなった自室での最後の日を楽しもうとしていたらいきなり栞が制服をもって声をかけてきた。


「えっと、栞? 何を言ってるんだ? 入寮は明日だし、今から制服を着ることもないだろう」


「いえいえ、お兄様こそ何を言ってるのですか。女装するんですからメイクや制服の着方、それに、アルーラ女学院はお嬢様学園なので最低限の女の子らしい所作を身に着けてもらいませんと」


 そうして僕は成すすべもなく栞に制服へと着替えられていた。


「お~、かわいいですよ。あとは、ウィッグをつけて軽くこの魔法の粉を顔にまぶせば……。うん! できましたよ。お兄さ、いえもうお姉様ですね。」


 そう言って僕の顔に軽くメイクを施した栞は鏡を持ってきた。


「えっと、これが僕?」


「ええ、そうですよお姉様。これだったら誰にも気が付かれることはないと思います」


 そうして少し離れて全体を眺めた後、「おにねえ様ぁ~」なんて言いながら栞は抱きついてきた。


「お、おにねえ様?」


「ええ、そうです。お兄様でもお姉さまでもありますので。学校に行ったら、もうお兄様とは呼べませんし今のうちにお兄様と呼んでおくことにしたんですけど、今はお姉さまなので混ぜてみました」


 そんなこんなで、今日という日は過ぎていった。僕が初めて着た女の子用の制服はスカートがスースーして落ち着かなかった。


 ちなみに鏡で見た自分の女装姿に一瞬見惚れてしまったのは心の中にしまっておくことにしようとおもう。

 



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