第9話

 夏休みを続けるかどうかの学級会が行われるのは九月十日だ。それまでは、とりあえず夏休みは続くことが決まっている。このきっかけがエネルギーとやらの働きかけによるものであっても、決まっていることは動かせない。

 十日までカオルは外に出かけないことにした。確かに休みではあるのだが、隣のクラスの友達は授業を受けている。カオルは勉強が遅れるんじゃないかと心配であった。午前九時になったら、勉強机に向かい、教科書を開いた。算数や理科は教科書を読むことで、勉強をしていると実感できたが、国語になると何を学べばいいのかが分からなかった。

 カオルは、父の部屋に行って、パソコンの電源を入れた。夏季休暇日数適正化法について調べてみたかったのだ。1時間ばかりインターネットで調べて分かったのは、夏季休暇日数適正化法というのは、労働時間を効率化するための一政策だということだけだった。どこにもエネルギーが総理大臣に耳打ちしたということなどは書かれていなかった。当たり前だ。魔法のような力で世界が変えられてしまったなんて、そんな馬鹿げたことがあってたまるか。カオルは一人でパソコンの液晶画面を見ながら、ぶつぶつとつぶやいた。

 正直なところ、夏季休暇日数適正化法が現実的な手続きで作られたものか、魔法によって生じたものか、どちらでもよかった。とりあえず、夏休みが終わって欲しかった。夏休みが明日終わるって思っていた時は、まだまだ続いて欲しかった。しかし、今は、学校に行って友達と遊んで、授業をしたかった。

 朝ご飯を食べていると、外から登校をしている子ども達の声が聞こえてくる。昨日見たテレビは面白かったとか、ゲームがどこそこまで進んだとか、楽しそうな声が聞こえてくる。

 カオルはうらやましかった。普通に夏休みが終わり、そして、僕は宿題をしていなかったことで山田先生に叱られ、半べそをかく。実際に体験したら嫌なんだろうけど、今のまま夏休みが終わらなくて、一人でぼんやり考えている方がもっと嫌だ。ああ、早く夏休みが終わればいいのに。

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