第7話
「まるで魔法みたいだね」
カオルは同調してみた。
「まあ、現実的にはあり得ないことを実現可能にするという点では、共通点があるかもしれない。しかし、君たちが考える魔法というものは、自己完結することができる」
「と、言うと」
「例えば、魔法で物を空中に浮かせようとする。魔法使いは、ビビデバビデブーか、テクマクマヤコンのような呪文を唱え、物を空中浮遊させるのだろうが、ワタシがしていることは異なる。ワタシは耳元でそっと囁くのだ。このような行動すべきだと。ひらめきや、啓示とも呼べるかもしれない。とにかく囁かれたものは、その行動を取らざるを得なくなる。それがたとえ、困難を極めることであろうとしても、一つの信念として構築されるのだよ」
カオルはよく分からなかったが、とりあえずうなずいてみた。
「で、僕がモニターというのはどういうことなんですか」
「先にも話した通り、世界の変化は人間の行動が先んじて始めるべきである、それがまともな世界であろう。エネルギーが耳元で囁くというとこは、本来は行ってはいけないことだ。世界を大きく変えてしまうからね。しかし、現実問題として、皆が心の中から生じている休みを求めるエネルギーは、限度量を超えてしまっている。この内なる声に政治家というものは、真摯に向かい合い、行動をすべきはすである」
エネルギーに身体を支配されている西村君は続けた。
「そこで、ワタシは動いた。世界の変化を促すために。しかし、先ほどから繰り返している通り、人間に任せなくてはいけない。そこでだ。世界の変質の前後を評価するべき人物が必要となる。つまり、モニターだ。世界の変化によって、どのように変質したかを、そこには過度な関与がなかったかを、評価してもらわなくてはいけないのだよ」
カオルはただただうなづくだけだった。
「モニターに選ばれた人間は、変質した世界の前後の記憶が維持される。私が行う行為は、魔法のようなものだと言えるのだけれど、全ての人間が影響を受けてしまうと、それが人間にとって正しかったのかどうか評価できない。世界の変質は、きっかけが不自然であろうと、いや不自然なものであるこらこそ、人間によって正当な評価されないといけない。よって、モニターの記憶は改変されず、世界に違和感を持つことで、世界の行く末を見なくてはいけないのだ」
カオルは西村君の説明が理解できたと言えなかったが、とりあえず分かったことは夏季休暇日数適正化法というのは、エネルギーに取り憑かれた西村君の魔法によるもので、僕は魔法をかけられなかったということだった。
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