11/11 月曜日

 アイビーに食べ物と飲み物を持っていく。


 アイビーが朝ごはんを食べ終わった時を見計らって、そっと彼女の頭を腕に抱えた。

 ふわっと香る彼女の匂いと、サラサラとした髪の感触。

 浅く呼吸するその口からはさっき飲んでいたココアと砂糖の甘い匂いがする。

 

 近くで見るとやっぱり綺麗な髪だなぁ。 


 てっきりまた「触らないで」と言い放たれると思ったけど、そんな事は無かった。

 学校の時のようなころころと変わる表情、笑い声も一切なくただぼうっと私を見ている。

 ぼうっとした目を覗き込む。


 「私の事をお母さんだと思って甘えてもいいんだよ。」と彼女に語り掛けた。

 その目が僅かに動いた・・・・・・ような気がした。


 もっと一緒に居たかったけど、行かなくちゃいけない。

 

 最後にぎゅっと彼女を抱きしめて学校へ行った。

 いつもの下着姿だったので、肌がすべすべしていて気持ちよかった。


 もうこの時期になると受験が近いのでほとんどの授業が自習になる時が多かった。

 午後からの授業なんて全部自習だった。

 どうせ自習になるんなら、早くに家に帰ってアイビーの傍にいてあげたい。


 寂しい思いをさせてしまっているのが辛い。


 それから学校が終わるなり急いで家の戻り部屋へ行き、アイビーの事をそっと抱きしめた。

 拒絶されないか怖かったけど、杞憂に終わった。


 むしろ、アイビーの腕が私の体にきゅっと巻き付いてきた。

 そして、私はこの日を忘れない。


 アイビーが喉から絞り出すような声でだけど「甘えてもいいの?」と言ってくれた!


 嬉しかった。

 やっと、アイビーが私の事を必要としてくれた。

 私がアイビーにとって無くてはならない存在になった。

 やっとアイビーの事を幸せにしてあげられる。

 私の、私の、私の・・・

 

 いっぱいいっぱい幸せにしてあげるからね。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る