11/9 土曜日

 アイビーに食べ物と飲み物を持っていく。

 今日はいつもと変えてみてサンドイッチと温かいココアを用意した。

 

 お昼の時に分けてあげておいしい、と言ってくれた。あの時はハムと卵のだったっけ。

 今日はレタスとハムにチーズを挟んだのだけど、おいしいって言ってくれるかな?

 

 扉を開けるとアイビーがいる。

 それがしあわせ。


 でも、最近のアイビーはぼうっと窓の方を見たまま私の事を見てくれない時がある。

 そのまま部屋で私の用事をしてふと気が付くと、アイビーは目からつう、と涙を流していた。


 髪はボサボサとしていて頭を掻いたのかな?彼女の周りに黄色い髪の毛が何本か落ちている。


 服は着ていなくて、この部屋に来てからは下着のままで過ごしている。

 せっかくクローゼットに沢山の服を用意したのに、一度も彼女は着てくれない。


 アイビーをこうしてから1ヶ月くらい経つのかな?

 

 あの日から時間が出来たらアイビーのお母さんの所に行っているのだけど、警察の人から「見つけるのは絶望的」と捜査の規模が縮小されたらしい。

 家にあげてくれて1時間くらい会話するくらいに仲良くなったけど、その日はずっと泣いていた。

 

 もしかしたら前の学校のどこかにいるのかもしれない、と仕事を暫く休みその近くへ探しに行くらしい。

 

 ごめんなさい。ごめんなさい。


 でも、アイビーを外に出すわけにはいかないんです。


 何か手掛かりがあるかも、とアイビーの日記を手渡された。

 「よくアイビーと仲良くしてくれていた上原ちゃんに見てほしい。」と言われ、私はそれを持ち帰ってきた。


 貴方の事を騙すような事をしてごめんなさい。

 なにも言えなくてごめんなさい。

 

 帰ってきて日記を開くと、私への想いが書かれているページがあった。


 最初は地味な子だった、でも頭が良くて数学を教えてくれる、料理が上手くてお弁当を分けてもらった、と色々書かれていた。

 でも、「好き」という文字は一つもなかった。


 そして10/11。

 ハグ、告白、どっちもしてもらった事が無い。

 された人は暖かかったんだろうな。言われた人は嬉しかったんだろうな。

 

 でも私はだたの

 頼りになる同級生。


 嘘でもいいから、一回だけでいいから・・・

 好きって言ってよ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る