映像記録 4
10/11/07:55
「遅くなってごめんね。アイビー、お水だよ。」
鉢植えの植物へ水をやる光景が映し出される。
そして傍にあった窓へと映像が移る。
そこから見える道では金髪の女生徒が横切る様子が映し出される。
ゴトッゴトン、という音と共に映像が激しく乱れその様子が暫く続く。
激しい映像が止まったかと思うと、そこには先ほどの生徒が映っている。
「上原っちおはよー。お、金髪かわいーじゃん!」
「あ、ありがとう。綺麗かな?」
「綺麗綺麗。似合ってるじゃん!って、カメラそれって撮ってるの?」
「あ、ごめん付けっぱなしだった・・・・・・今消すね。」
10/11/10:20
大勢の人の声が入り乱れている。
映像は下から撮影者と金髪の女生徒を映し出している。
二人は店員の制服を身に着けている。
「あ、渡辺先輩!お久しぶりです!」
「おひさ!元気にしてた?」
「元気です!タピオカって初めて飲むんですが、オススメってありますか?」
「んー・・・・・・一番人気の抹茶とか?」
「それじゃ、それを2つお願いします!あとで一緒に回りましょ!」
「ごめーん。この後バンド練習しなきゃだから昼過ぎでもいい?」
「はい!待ってます!」
「二つで680円になります。」
「はい、千円からでもいいですか?」
紙幣を受け取り、硬貨と二つのタピオカドリンクを渡す映像。
タッタッという足音が遠ざかってゆく。
「ねえ、渡辺さん。」
「ん、どうしたの?」
「今日ってさ、暇な時間ってある?」
「うーん・・・・・・今日は夕方にならないと時間が無いかも。」
「わかった。それじゃ、時間できたときにラインしてもらってもいい?」
「りょー。」
10/11/21:11
シュッシュッシュッシュッ。
朝の映像でいつも映っていた植物へ狂ったように水が吹きかけられている。
吹きかけられる水は色が黄色い。
それからバシャバシャと乱暴に水をかき混ぜる音がする。
「はぁ・・・・・・はぁ・・・・・・。」
コトンと霧吹きが置かれる。
「うぅ・・・・・・ひっく・・・・・・。」
そして嗚咽。
「こんな事したって、アイビーが私を好きになる訳じゃないのにね・・・・・・。」
その時、窓の外で金髪の女生徒が街頭に照らされながら歩いて行く。
「あっ・・・・・・!」
その声がしたかと思えばバタンと激しく扉を閉める音と、パタパタとくぐもった騒がしい足音が遠くへと行く。
それから程なくして二人分の足音が近づいてくる。
扉が開く音がし、くぐもったその足音をより鮮明に捉える。
「金髪に似合う髪留めって言っても、あたしあんま持ってないから分からないよ?」
映像は一切動かされていない為その二人の様子は見えないが、音は拾っている。
「ううん、本当のわけは違うんだ・・・・・・。」
「え、そうなの?ホントはなに?」
「私・・・・・・わたしね・・・・・・。」
大きな深呼吸をする音。
「私、渡辺さんの事が好きなの。」
「あたしも上原っちの事好きだし!」
「そういう好きじゃなくて、その・・・・・・。」
すぅ、はぁと音が拾えるくらいの深呼吸の音がする。
「恋のというか、本当の好きというか・・・・・・渡辺さんの事が好きなんだ・・・・・・。」
長い沈黙。それから暫くして
「それって変だよ上原っち。」
戸惑ったような声音の音声。
「だって、あたしたち女の子同士じゃん?」
「そ、それは・・・・・・。」
「それに、あたし佐藤っちに告白しちゃったからさ。無理なんだ。」
「う・・・・・・。」
「その好きってきっと、親友としての好きなんじゃない?ほら、ラブ一歩手前の。」
「違う・・・・・・よ。私、私は・・・・・・。」
「これからも親友でいよーよ上原っち!じゃあ私、もう帰るね。」
一人分の足音がゆっくりと遠ざかってゆく。
「行かないで・・・・・・待ってよ・・・・・・!」
引き出しが開いたような音がし、タッタッという足音。
それから
「うわッ!」
そしてドサッと何か重いものが倒れる音。
「ねえ、そこの人。この人を運んで貰いたいのだけどいい?」
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