映像記録 3

10/10/07:10


 鉢植えの植物の映像が映る。

 今までの映像の時と比べ瑞々しさが無く、何かしらの異常をきたしているというのが見て取れる。

 力なくだらんと葉の先が下向きになっており、そこに黄色い水滴が出来ている。

 

 その周囲に3つの葉が落ちていた。


 「アイビー、お水だよ。」


 そう言いそれに水が吹きかけられ、続いて黄色い液体が吹きかけられた。


 10/10/12:34


 長い廊下とそこを行き交う生徒達の映像が映る。

 

 そして映像のある一部分へと映像が拡大されてゆく。


 金髪の女生徒と腕章をした男子生徒が映っている。


 パクパクと動く女生徒の口とそれに返事をするように開いている男子生徒の口。


 「なんか手伝う事ある?・・・・・・かな。」 


 撮影者の声が入る。

 

 10/10/21:11


 朝の時間帯の映像に映る植物が映し出される。


 「ねえ、アイビー。」


 撮影者の声。


 「私ね、お母さんが居なくなってから周りが全部変わっちゃったの。」


 それに手が伸びてきて葉や茎を撫でるように触っている。


 「あの日からお父さんは全然家に帰ってこないからさ、私、家では殆ど喋らなくなったんだぁ。お手伝いの人が居るから人の声はするんだけど、その人達も学校の皆みたいにまるで腫れ物に触るみたいに必要以上に私と全く関わらなくなっちゃって。それから一人でお母さんみたいに何でも出来るように頑張ったんだ。」


 手が添えられ、指の腹で茎がなぞられている。


 「でも貴方、アイビーはさ、知らなかったって事情があったけど私と仲良くしてくれたよね。それに楽しいって言ってくれた。すごく、嬉しかった。」


 手が画面から引き、静寂と微動だにしない植物の映像。


 「私、貴方が好き。」


 すうすう、と何度も呼吸する音がする。


 「女同士って気持ち悪いかもしれないけど、好き。」


 すぅ、と大きく息を吸い込む音。


 「こんな私を、貴方・・・・・・アイビーは受け入れてくれるかな・・・・・・?」

 

 パンッと何かを叩くような音がし、それに続いて「痛っ」という声がする。


 「私、明日貴方に告白する。」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る