第2話 シスターライラと新生活
ライラが用意してくれたジゼルの部屋はシンプルだが清潔で居心地のいいものだった。
ジゼルは持ってきた荷物を適当に片付け終わると、その間夕食を準備してくれていたライラのもとへ駆けつける。近づくにつれて美味しそうな匂いがジゼルの鼻をくすぐった。
食卓にはやわらかなパンや野菜いっぱいのスープ、オリーブの香る魚料理、そしてワインが並んでいた。
「わぁ!おいしそう!」
「このワインは私が作ったのよ、ジゼル。私の仕事にはワイン作りもあるの」
「ライラが? すごい!ん~、とってもいい香り!」
「ありがとう。でも、ジゼルにも少し手伝ってもらうわよ?シスターとしてのお手伝い、それがお約束でしょう?」
「が、頑張ります……!」
椅子に腰を降ろして食への感謝を込めたお祈りを済ませ、二人は料理を口に運ぶ。
ところで、長年ヴァンパイアハンターになることしか考えていなかったジゼルは、世の中の知識が少しだけ欠けている。シスターというものが何をする人なのか、何をしてはいけない人なのかなどもいまいちまだ分かっていない。まあ、それは先輩であるライラに聞けばいいことなのだが、ジゼルには気になることがひとつ。
「ねえライラ?私とライラの分の食事しかないけど、ここには他にシスターはいないの?」
「前は何人か私の他にもシスターはいたわ。けれど、ヴァンパイアに襲われてしまって……。神に捧げた身を汚された彼女達はシスターとしての資格を失って教会を出て行ったの。残ったのは私だけよ」
「ヴァンパイア……」
「だからね、ジゼル。私はしばらく一人だったの。あなたが来てくれて、この教会がまた賑やかになったのが嬉しいわ。これからよろしくね」
ジゼルの目を見ながら嬉しそうに頬笑むライラ。その視線から心からの歓迎と喜びが伝わってくるのをジゼルはしっかりと感じた。
「ライラ……!こちらこそ、よろしくお願いします!」
すっかり嬉しくなってしまったジゼルは勢いよくパンを頬張ってしまう。大きく噛みちぎられたパンはジゼルの口をいっぱいにしてしまい、またジゼルは調子にのって勢いのまま飲み込もうとしてしまったのもあって、ジゼルの喉は一瞬呼吸を遮られてしまった。
「んぐっ!げほぁっ!んふっ……!」
「あらあら、ジゼル?大丈夫?」
「えふっ……、はぁ、びっくりした……!ごめんねライラ、大丈夫だよ!」
「……ふふっ、うふふ!まったく、おもしろい子だわ。退屈しなさそうね」
ライラは久々に誰かとの、ジゼルは新しい友達との食事を楽しんだ。
全てをお腹に入れ終わった後も、ライラはまだワインを飲んでいる。
「ライラ、まだ飲むの?」
「も~っちろん!これは神様との飲み会なの~!」
…………!?
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