第1話 ヴァンパイアハンター ジゼル
もうすぐだ。
ガタゴト揺れる列車の中、荷物の整理と忘れ物がないかを確認し到着を待つ。大事に持っていた紙を再び開いて最終チェック。
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ジゼル・ノア
あなたはヴァンパイアハンター連盟の訓練を受け、立派に成長しました。
あなたにヴァンパイアハンターの資格と任務を与えることをここに記します。
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
冒頭のこの文にジゼルはまた誇らしさで胸をいっぱいにする。この日のために今まで頑張ってきた、この紙はそれが報われた証拠なのだ。
任務先の街の名前と、列車の到着場所の表を何度も見比べて正しいことを確認した。
ガタン、ガタ……キーッ
止まった列車、その地の第一歩をしっかりと踏む。
沈んでいく日に照らされオレンジ色に染まる街並み、ジゼルの淡いブロンドを優しく撫でる風。美しいこの地の全てが自分を歓迎するかのように思えた。
着いた、とうとう着いた。
ここが、私がヴァンパイアハンターとして活躍できる街。この街に潜むヴァンパイアから、私が人々を守ってあげられる。
憧れの光景に胸を踊らせ、ジゼルは荷物を持って駅を出る。地図を確認しながら目的地の教会を目指す。
ジゼルの故郷の村よりは発展しているが、少し遠くの城下街などに比べるとまだまだであり、教会もその1つしかない。駅からの道も距離はあるが簡単で、先ほどからわくわくが止まらないジゼルの早歩きであっという間に着いてしまった。
連盟への協力を許し、ヴァンパイアハンターへの支援を約束したこの教会を拠点に、ジゼルはハンターとしての使命を遂行しながら同時にシスターとして教会のお手伝いをすることとなった。
いざその扉に手を伸ばす……前に、きちんと身だしなみを整える。第一印象は大事だ。今日からお世話になるのだし、ここにいるシスターとも仲良くなりたい。しっかりチェックして、ようやくノック音を響かせる。
扉は案外すぐ開かれた。
「いらっしゃい、あなたがジゼルね。ちょうど迎えに行こうと思っていたところなのよ」
赤髪を後ろで緩くまとめた綺麗な女性が優しくジゼルを出迎えてくれた。修道服を着ているし、ここのシスターで間違いない。
「はい、ヴァンパイアハンターのジゼル・ノアです!今日からよろしくお願いします!」
「ふふっ、元気な人。こちらこそこれからよろしくね。さあ、長旅で疲れたでしょう。夕食の用意は出来ているわ、どうぞ上がって」
「ありがとうございます!」
彼女は荷物を分けて持ち、これからジゼルが使う部屋まで案内する。
「私はライラ・バトラー。歳は私の方が少し上でしょうけど、気軽にライラと呼んでくれて構わないわ、敬語も無理に使わなくていいのよ」
「あ、ありがとうございま __」
「ジゼル」
「……ありがとう、ライラ?」
「ええ、それでいいわ」
にこりと満足そうに笑うライラ。
うん。いい人だ、絶対。
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