73話 生徒会始動!


「えっ!? わ、わたしが部長!?」


「はい。私たちのような権力ばかりが集まる小さな組織というのは基本封建的でして。血縁というのは大事なんですよ。お姉様の実績を鑑みて、新たな壁新聞部の部長にはあなたが相応しいと考えていました。そして、その写真を利用しない姿勢。彼曰く、あなたはクズじゃない……ということです」


「わ、私には荷が重いですよ! というか今の部員さんたちはどうするんですか?」


「クビだそうです。正確に言えば主犯の何人かに指導が入って、おそらく部活動停止になり暫くは活動できなくなります。そうすれば、残りの人たちもそんな中で積極的に続けようとは思わないでしょう」


「そんな……で、でもそしたら部員が私ひとりになりませんか?」


「いえ、それは問題ありません。今の壁新聞部に不満を覚えていたのはあなただけではありません。今回の件で新たな入部依頼はいくつかやってくるでしょう。既に一件来ていますしね。どうやら、楠奈さんのお友達、みたいですよ」


 お友達。私に思い浮かぶ顔は一つしかなかった。でもなんで彼女が知っているんだ。


「加藤くんが、リークしたみたいです。そしたら「是非、楠奈さんを支えたい」と仰っていたみたいですよ」


 ああ、まんまとしてやられたのだなと思った。 悪い噂のたつ壁新聞部を再編しつつ、頭を恩を売っておいた私に挿げ替える。そうすることで、裏生徒会が生徒会に従順な生徒会広報部へと変貌する。悩みの種が、一瞬にして味方になる。


 そしてこの作戦の一番上手いところは、そんな裏側の一切を種明かししても、当の私が壁新聞部部長という席に憧れてしまっているから、問題無いというところ。


 生徒会は、広報関連の仕事を丸投げすることが可能になり、人手不足が解消され、裏生徒会と呼ばれていた壁新聞部が手駒になる。私や私のように今の壁新聞部を良く思っていなかった人間たちは生徒会に感謝し、壁新聞部は元に戻る。Win-Winの関係が上手く築かれている。


「悪い話じゃないでしょう?」


 生徒会長が微笑む。


 ああ、お姉ちゃん。私、サインしてしまったよ。


「ありがとうございます。ナさん。ふふ、一緒に頑張りましょうね」


 今になって分かった。反権威的な存在がある程度必要悪として求められる理由が。こうやって権力っていうのは暴走するらしい。



※   ※   ※



 時は進み、夏休みを間近に控えた7月下旬のとある放課後。


 ミンミンミンとやかましく蝉の声が、生徒会室に響く。


 窓の外で揺らぐ夏を感じさせる新緑の木々を眺め、風鈴の音でも聴きながらお茶をズズズってやりたい気分……だができそうも無かった。


「終わらん!」


「終わらせてください。会議は明日です。本当は前日にこんなことやってること事態、スケジュール管理ができていないんですよ」


 月宮先輩に言われた。そういえば、俺はあくまでも生徒会を補佐するだけで役員ではないような? こんなやらせますか、部外者に!


 せっかく壁新聞部を飲み込み、人手不足解消を図り、しれっとドロンする作戦を建てたというのに、むしろ管理する幅が広がり面倒くさくなったとも言える。


「おい、クズ、手が止まってるぞ」


「クズじゃなくて、楠奈です! というかこれ壁新聞部のやることじゃないですよね? 最初の説明と違う気がします!」


「壁新聞部? そんなものはない。生徒会広報部だ。ここは大企業でも何でもない。社員全員が、現場全体を見て働く必要があるんだ」

 

「何ですか! そのブラック企業がいかにも言ってそうなこと! というか社員って言っちゃってるじゃないですか!?」


「俺だって本当はこんなことはやりたくない――」


「――はい、二人とも仲良しは良いけど、ちゃんと今日中にその仕事は終わらせてね」


 やばい、あの生徒会長やばい。本格的に仕事アイデンティティにし始めちゃっている。と榊原が小声で言ってくる。


「しょうがない。月宮先輩は責任を感じやすいだけで、悪気はない。……とそれより実は俺、文化祭でやるバンドの練習が今日あるんだ。あとお前に任せていいか?」


「は? 嫌に決まってるじゃないですか!? ……というか先輩がバンドとかウケる。辞めた方が良いですよホント」


「それは俺が一番分かってる。でも、ほぼほぼ強制でさ。ということで頼んだ!」


「おいっ!」


 俺は、榊原に全てを押し付けた。でも、普通にバンドも嫌だ。


 まぁそんなこんなでやっと生徒会は動き始めましたとさ。

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モブキャLIFE! 五面楚歌 @xxxxxxxxxx

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