俺と鈴音さん。

第4話

19xx年 12月25日。


「ありがとうございました!またお越しくださいませ!」


「鈴音ちゃん!


俺もエアロプレスに通って10年…いや、それ以上になるけど鈴音ちゃんみたいな真面目で気配りができる子は初めてだな。新人の…坂口くんの接客も鈴音ちゃんの教育があってこそだと思うし。ここ辞めてもみんなのことは忘れずに。自分の夢を追いかけな。」


「ありがとうございます…!」


最後のお客さんを見送って店内にはBGMだけが鳴り響いていた。

嫌でも鈴音さんが仕事を辞めてしまうという現実が襲ってきて今日は少しだけBGMを恨んだ。


「常連さん達も鈴音さんのこと悲しんでる人多かったですね…はぁ。終わり…かぁ。」


「そうだね…なんか昨日までは全然平気だったけど、いざ当日ってなると思入れが出て悲しくなっちゃうもんだね。」


鈴音さんの目は少し涙目になっていた。

片目にはうっすら俺が映っていたけれど、俺は思うような言葉が出なかった。


「よーし!最後の片付け始めよっか!早く綺麗に!丁寧に!やるよー!」


「はい!」


いつもは嫌だと思う後片づけだけれども、今日はなんだか楽しくって、終わってほしくない気持ちが強かった。

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