第2話

「でも鈴音さんももうすぐですよね…」


「うーん。そうだなぁ。今が12月11日で辞めるのが引越しのこともあるし12月…25日あたりかな?」


鈴音さんは今はフリーターとして働いていて来年の1月からイタリアに留学する。

イタリアで本場の珈琲知識を学んで将来は自分のお店を持つことが夢な鈴音さん。

夢も何にも持っていない、自分を持っていなくて自信がない俺はそんな鈴音さんに憧れの感情も持っていたのだと思う。


「鈴音さんがいないエアロプレスなんてエアロプレスじゃないです!」


「何言ってんの、ほんと勝也くんは面白いなぁ…」


寂しそうな、悲しそうな顔をする鈴音さんは今までで見たことのない表情だった。


「でも私、勝也くんの先輩になれて良かった。私の方こそ勝也くんじゃなかったら辞めてたかもしれない。ありがとね。」


そう言って俺に微笑む鈴音さんの顔を見てとっさに、俺の気持ちを伝えそうになった。

…が出なかった。


「んー!さてと。片付けも済んだしそろそろ帰ろっか?」


「す、鈴音さん!25日のバイト終わり、俺と最後に出かけませんか?!」


「え?25日?」


「は、はい!」


驚く鈴音さんもそうだが、自分自身も驚いている。人間っていうものは境地に立たされたら意外と強くなれるもんだ。まぁ少しだけだけど。


「鈴音さんに見せたいものがあるんです!」

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