夜空が見えたあの場所で。僕と先輩。

コユキ

鈴音さんと僕。

第1話

19xx年 12月11日。


「ごちそうさま」


「ありがとうございましたー!またお越しくださいませ!」


「うんうん!あのお客さん滅多にあんなこと言わないよ?だんだん受け入れ始めてきたね。よかったよかった。」


「これも鈴音さんのお陰ですよ!手取り足取り何もかも教えてくれて…」


「こら!語弊が出る言い方しないの!ほらほら、最後のお客さんも帰ったことだしパパッと片付けちゃおっか。」


そう言って笑いながら話してるのは俺の2歳年上の岩崎鈴音さん。

カフェ エアロプレスではシスターブラザー制度ってのが用意されていて、先輩と後輩が一丸となって仕事を教えたり教えてもらったり…俺はこんな優しい鈴音さんが先輩で本当に良かったと思う。じゃないとこんなバイト続けていない。


「でも最初は酷かったね。ここのお客さん、ちょっとでも気に食わなかったらすぐ怒る人が多いから…常連さんだから仕方ないけれど…」


「最初は本当にきつかったです。何回辞めようと思ったか…ミルクは2個っていつも言ってるだろ!とかシュガーはこの種類じゃなくて低脂肪のやつを3つ!だとか…それだけ入れたら一緒じゃねーの?とか思いました…今だから笑えるんですけど。」


「あったねーそんなこと。今思ったらほんと理不尽すぎて笑っちゃう。」


「でもここまで続けられてるのも鈴音さんのおかげです。俺、絶対アルバイトとか続かなくて。いつも3ヶ月ぐらいで辞めちゃったり…ほんと俺が変われたのも鈴音さんのおかげです。ありがとうございます。」


「言うねー!そんな褒めても何も出ないよ?」


少しはにかんで笑う鈴音さん。

…やっぱり綺麗だ。

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