第51話
「ボラーァ」
小屋の入り口に顔を向けると、そこには笑顔のノッポが両手に缶ジュースを持って立っていた。
「ボラーァ」金太は意外だという顔で挨拶を返す。
「ひょっとしてここにいるやろと思って……」
「うん」
「はいよ。いつも金太にジュースもらうけん、きょうはぼくがご馳走するよ」
ノッポは缶ジュースを差し出しながらいった。
「サンキュ」
「金太、なんか元気なさそやネ」
「そんなことないさ。いつもと一緒だ」
「そげんこつなか。ちゃんと金太の顔に書いてあるばい。そのうちきっと充電器は見つかるけん、元気ば出さんネ」
金太が虚勢を張っているのをノッポは見抜いていた。
「………」
「ところで金太、やっぱおはるちゃんのこと好いとーと? 正直にいったらよか」
「そ、そんなことない。オレはただ……」
金太は図星を指されて少しどぎまぎする。
「ぼくにはちゃんとわかっとるけん。ばってん誰でも好きな子のひとりやふたりはおるて。そやからなんもかくさんでええて」
ノッポは缶ジュースをぐびりと飲んだ。
「でも、このことは誰にもいったらだめだからな」
「わかっとるって。アイコにもいわん」
「ばーか」
金太は丸イスから立ち上がると、缶ジュースを手にしたまま小屋の入り口に立った。
どこで鳴いているのか、油ゼミの鳴き声が夕立のように聞こえて来る。
金太の後ろに立ったノッポは、そっと金太の肩に手を置いた。
見上げた空の色がやけに青かった。
( 了 )
『ロビン秘密結社』の仲間たち [Ⅱ] - 迷走の時間(とき)ー zizi @4787167
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