第48話

 1週間後――。

 秘密基地に集まったメンバーは、なぜか生き生きとしているように見えた。

「ボラーァ」

「ロビン秘密結社」が結成された当初、誰もがこの挨拶に恥じらい、そして戸惑いを覚えた。しかしいまでは顔を合わすと自然に口から出て来るまでなった。

 本日もいつもと同じはじまりが違和感を排除し、この湿気のこもった小屋に誰ひとり遅刻することなく勢ぞろいしている。

 金太はみんなにメールで宿題を出してあった。その宿題というのは、おはるとよし吉にずいぶんと世話になったお礼に、各自なにか1品だけプレゼントを渡したらどうかという提案だった。

 それにはみんなが賛成した。しかしプレゼントにはひとつ条件があった。あの時代に相応しくない道具や材質は絶対にご法度だということだ。もし無差別にそんなことをしてしまったら以後の歴史がとんでもないことになりかねない。

「いまからおはるちゃんとよし坊へのおみやげのチェックをします。まずアイコから」

「あたしはこれ……」

 愛子は紙袋から赤い縁取りでピンクの花の刺繍がしてあるハンカチを見せる。

「うん、これは問題ないから合格。つぎ、ノッポ」

「ぼくはこれや」

 メガネを指先で上げたあと、布袋から小ぶりの可愛い扇子を取り出して、大事そうに開いた。

「うん、これも合格。じゃあ今度はネズミの番だ」

「ぼくはこれだよ」

 ネズミは、小さな巾着袋をぶら下げて見せる。

「その袋になにが入ってるんだ?」

 金太は少しいらついて語気が強くなっている。

 ネズミがその袋を逆さにすると、なかから青や黄色のきれいな5つのガラスの玉が転がり出た。

「ビー玉じゃないか」

「そうだよ」

「うーん。ビー玉ってガラスでできてんだよな」

「そうだよ。ガラスはだめなの?」と、ネズミは怪訝な顔をする。

 金太はしばらく考えていて、

「ガラスもないことはないから、ぎりセーフということにしよう。さて最後はオレなんだけど……」

 金太は例の布袋を覗き込んだあと、柿色の千代紙に巻かれた15センチほどの筒を取り出した。3人は一瞬それがなんなのかまったくわからなかった。

「万華鏡だよ、万華鏡。ほらきれいだろ? もうひとつあるんだ」

「えッ、金太はふたつなの?」

 愛子はおはるにプレゼントしたいものがいくつかあった。でも金太のメールにはひとつだけと書いてあったのでしかたなく諦めてハンカチにしたのだ。

「そうだよ。でもこれはみんなもよく知ってるかわり玉。これだったらみんなで食べることができるだろ?」

 3人は「みんな」という言葉に納得したのか、誰も不平をいわなかった。

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