第23話 3
たった2週間だったが、4人で情報交換したことで思った以上に成果が上がった。まあそれ以前にあまりにも無知だったことで、吸収がよかったということもあるのだが……。
なにはともあれ、2週間後の土曜日の午前中に4人は秘密基地に集合した。
「ボラーァ」「ボラーァ」
それぞれが金太から指示されたとおりのものをバッグに詰めて持って来ている。
「アイコ、着るものなんとかなったのか?」と金太。
「大丈夫。っていうかァ、あたし去年町内の盆踊りで着た浴衣があったから、お母さんにいって出してもらった」
「そうなんだ。で、ネズミはどう?」
「ぼくはアイコさんと違って浴衣なんかなかったから、金ちゃんがいってたように文化祭を口実にしてカアさんに頼んだんだ。そしたらデパートかどっかで買って来たみたい」
ネズミは嬉しそうな顔で話す。
「よし、いよいよこれから実行するけど、みんな覚悟はいいよな?」
「よかよ」「いつでもいいわ」「なんかわくわくするね」
「じゃあ、向こうで荷物になるとだめだから、ここで着替えちゃおう」
金太はそういいながらバッグのなかから浴衣を取り出した。
「ええ? ここで着替えるの? こう見えてもあたしは女の子なんだからね」
愛子は口を尖らせる。
「ごめん、そういえばそうだった。だったらこうすれば……そのTシャツの上から浴衣を羽織ればいいじゃないか。それだったらいいだろ?」
「まあ、いいけど……」
愛子はやや不貞腐れ気味になりながらバッグのファスナーを開けた。
4人は黙って着替えをはじめる。やはりネズミは浴衣に慣れてないせいか、えらく時間がかかっている。見かねた愛子が弟の面倒を見るように手伝ってやる。ようやく着替えがすんだ4人はお互いの姿を見てややはにかんだ。
足もとを見ると、金太とノッポは草履で、愛子とネズミは下駄を履いている。金太とノッポは前回のトリップで学習をした。下駄より草履のほうが行動しやすいのだ。そのことは愛子たちにもアドバイスをしたのだが、経験のないふたりには通じなかったようだ。
「さあみんな、こっちに集まって」
金太は3人を机の近くに呼んだ。
「じゃあ、いまからみんなが楽しみにしていたタイムトリップに出かけます。オレのそばにくっついて」
そういってからおもむろにあの携帯電話を取り出すと、緊張の指先でボタンを押した。
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