第22話

 次の日、学校から帰ってパソコンを立ち上げると、まず昨日の夜に送られたメールの有無を確かめる。みんなはメールを読んだみたいで、それぞれが調べたことを早速送って来ている。面白いことに各自気になることが違っていた。

 ノッポは小心なためサムライの刀が気になるのか、調べた内容がもっぱら武士の生活で、アイコは女の子らしく、着るものに興味を持っているようだ。そしてネズミは遊び道具と食べ物が気にかかっているのがよくわかった。

 リーダーとしての金太は、みんなとは違ったジャンルを探さなければならない。机に向かって懸命に頭を捻るのだが、みんなになにを知らせるのがベストなのかすぐには浮かばなかった。

 家族揃って夕飯を食べているときにもそのことが頭を離れない。夕飯は金太の大好きなカレーライスに鶏のから揚げだったのだが、カレーの皿に視線を落としたままで一向にスプーンが動いてない。そんないつもと様子の違う金太を見て母親が、

「金太、どうかしたの? えらく食欲がないみたいだけど」

「ううん、そんなことない」

 金太は首を横に振りながら母親を見る。

「ははーん、さては金太、テストの結果がわるかったんでしょう? どっちみちあんたは数学が苦手なんだから、少々点数がわるくたっていまさら気にすることはないのよ」

 高校2年生になる姉の増美は歯に衣を着せぬ物言いをする。

「そんなんじゃない」

「金太、学校でなにかあったのか?」

 普段あまり会話をしない父親だったが、金太の顔色がよくなかったからか、心配そうに訊く。

「違うって」

 そういったとき、金太の頭になにかが閃いた。

 金太は急いで残りのカレーライスをかき込むようにすると、コップの水をひと口飲んで2階の部屋に駆け上がった。

 マウスを掴んで慣れた手つきで素早くクリックを繰り返す。そして開いたサイトは江戸時代の読み・書き・算盤を教える「寺子屋」についてだった。

 金太は食事のとき、増美にテストのことをいわれ、父親に学校のことを訊かれたことでその時代はどうやって勉強をしていたのか知りたくなったのだ。早速主だった事柄をパソコン内のメモ帳を立ち上げて貼りつけた。

 そんな作業に集中していたとき、ふとおはるのことを思い出した。

(おはるちゃんの歳はオレたちとそれほど違わないと思うんだけど、本当の歳はいくつなんだろう? おはるちゃんはやはり寺子屋で勉強しているのだろうか……?)

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