第20話 2
金太は一旦秘密基地を出て家に帰ると、しばらくしてビニール袋を提げて戻って来た。袋のなかにはオレンジジュースとコーラのペットボトルが2本ずつ入っていた。
「同じものが冷蔵庫に入ってなかったから、好きなほう飲んでいいよ」
3人は余程咽喉が渇いていたのか、遠慮なく手を伸ばすとキャップを取るやいなやゴクゴクと音を立てて飲んだ。金太はその姿を見ながら残ったコーラのキャップを捻った。
みんながボトルの半分ほど飲んだ頃、おもむろに金太は話しはじめた。そして、愛子とネズミに携帯電話を拾ったときのことから、突然渦のなかに引き込まれて向こうに行ったこと、ノッポと一緒におはるとよし吉に会って話をしたことなど、タイムトラベルの一部始終を話した。
「……と、まあそういうことだ」
そういったあと金太はコーラをぐびりとひと口飲んだ。
「で、今度はいつ?」
ネズミは行く気まんまんの顔で訊く。
「いまの予定では、2週間後の土曜日を考えてる。だけど、それまでにもっと江戸時代のことを勉強しておかないといけない」
「どうして? タイムマシンに乗って移動するだけじゃないの?」
ネズミは気楽に旅行するような気分でいるようだ。
「そんなんじゃほかのみんなに迷惑がかかってしまう。もしネズミがそんな気持だったら連れて行かないからな」
金太はこれまでに見せたことのない顔になっていった。
「ごめん、ちゃんと金ちゃんのいうとおりにするから、連れてってよ」
「だけど、江戸時代っていったって、いつの頃を調べればいいの?」
これまで黙っていた愛子が口を開いた。
「オレたちが行ったのは西暦1832年なんだけど、やはり全般的に頭に入れておいたほうがいいと思う。だってその時代の生活状態といっても、文化なんてずっと受け継がれてきたものだから知っておいて損なことはないだろ?」
「そりゃあそうだけど、漠然としててどこから調べたらいいのかわからないじゃない」
愛子は眉間に皺を寄せて金太に訊く。
「まあそうだよな。オレだってまだ2回しか行ってないからあまり偉そうな口は利けないんだけど……そうだこうしよう、それぞれが家に帰ってインターネットで思いついたこと調べて、それをほかの3人にメールで教えるんだ」
金太は、名案を思いついたという得意顔になって3人を順番に見た。
「ねえ、金ちゃん、いまいった思いついたことってなに?」
ネズミは本当に困惑しているようだ。
「そうだなァ、まずはウィキペディアで江戸時代をざっくりと、そのあと生活について知りたいことを調べればいい。それと、テレビの「水戸黄門」とか「暴れん坊将軍」とかの時代劇を観て勉強するのもいい。これが最短の方法だと思うよ。なんせ2週間しかないから、さっきいったようにみんなで情報を共有すると、短期間でより多くの知識を得られるだろ?」
「さすがだね、金ちゃんは頭がいいね」
ネズミはようやく入り口を見つけたというように笑顔を見せた。
メンバーのなかでいちばん学校の成績のいい愛子は、あまり多くを訊かない。すでに自分なりになにか方法を見つけているようだ。
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