第18話 第2章 遠い旅 1
秘密基地に戻ったノッポは、貴重な経験をしたことで、先ほどまで心配で心配で口から心臓が跳び出しそうだったのだが、こうして無事に戻って来れたことで安堵の表情になっている。
「やあ、楽しかった。ほんとにみんな着物ば着て頭はちょんまげで歩いてるんやもん。テレビの時代劇のなかにいるみたいやった。でも金太、あんなに長いことあっちに行ってたのに、ここに戻って時計を見てみたら、たった15分しか経っとらんト。これってどういうことなんやろネ?」
ノッポは納得のいかないという顔になって金太に訊く。
「それなんだけど、オレもようわからん。この間も長いこと行ってたつもりだったのに5分しか過ぎてなかった」
「そうなんや。ところで金太、きみおはるちゃんのことどう思っとうや? ひょっとして好いとうや?」
「いや、いや、そんなことはない。それは思い過ごしというやつだ」
金太はムキになって否定する。
「ロビンの仲間うちで嘘はいかんということになっとう。それわかっとっト?」
「ああ、ちゃんとわかってるから。そうそう、嘘っていえば、アイコとネズミにもうこのことを話してもいいと思ってるんだけど……」
金太は話しを逸らすようにタイムトラベルのことを持ち出した。
「そうやね。ぼくたちばっか楽しんじゃあわるかけん、アイコたちにもチャンスをやらんとね」
ノッポはずっとほかのふたりに黙っていたことが気になっていたのだろう、ここに戻ったときに見せた安堵の顔よりさらに柔和になっている。
金太は早速その夜、愛子とネズミに緊急集合のメールを送った。メールの内容は、「大事な話があるので、明日午後1時に秘密基地に集合すること。もし不参加の場合は絶対にあとで文句をいわないこと 以上」というものだった。
1週間前だったら中間テストも控えていたので躊躇したかもしれないが、もう大丈夫だと勝手に決めて集合をかけた。
そして次の日の午後、ノッポと愛子はマウンテンバイクで、ネズミは近所なので歩いて集合時間の5分前に秘密基地に集まった。
「ボラーァ」
ロビン秘密結社恒例の挨拶で集会がはじまった。
この季節ともなると、この小さな小屋に4人も入るとなかなか厳しいものがある。建付けのわるい窓をなんとかこじ開け、入り口の扉も開けっ放しにしても蒸し暑さはまったく解消されない。
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