第12話
「外神田?」
「そう。おはるちゃんはそこから神田明神まで遊びに来ていたということだ」
金太は自慢げに話した。
「あと、時代はこの前話したように西暦1832年で天保3年、江戸時代の後期ということになる」
金太はインターネットを使って思いついたことをすべて調べていた。
「ふうん」
ノッポは金太の説明を聞いてもすぐにピンとは来なかった。江戸時代のことなんて社会の授業で出て来たのを覚えているくらいで、あまり真剣に考えたことがなかったからだ。
「ばっちりだ。さすがノッポ」
バッグのなかを覗いた金太は満足そうに笑った。
「本当に大丈夫なんやろネ?」
「心配いらないって」
なにかにつけて慎重なノッポは、不安な気持を拭うことはできなかったが、金太の自信のある言葉にやっと覚悟を決めた。
「向こうに行ったら気をつけなければならないことがいくつかある。そういうオレだってそんなに長いこと向こうにいたわけじゃないからすべてがわかってるわけじゃない。でもいえることは、まずオレたちの持ってるお金はまったく使えない。言葉も違うだろうから無闇に人と話さない。それと、神田明神はオレたちの基地だから場所はいつも頭に入れておくこと」
ノッポは、そう話す金太が友だち以上に思えてきた。
「わかった。ぼくは金太のいうとおりにするけん、なんでもいってくれたらよかヨ」
「ありがと。なあノッポ、きみ緊張してるのか?」
「うん、ちょっと」
「だったら、ほら、これ」
金太はポケットからいつものかわり玉を取り出してノッポに渡した。
ノッポは黙ってそれを受け取ると、丁寧に封を開けて口に放り込んだ。
「さあ、邪魔が入らないうちにさっさと準備にかかろうぜ」
「邪魔?」
ノッポは眉根を寄せて金太を見る。
「ああ、ひょっとしてネズミがここにやって来るかもしれん」
「ってことは、ネズミにはまだこのことをしゃべってなか?」
「ああ、話してない。本当はこの前も話したけど、確かに秘密結社は隠し事をしてはいけないという決め事がある。でも、こればかりは話すことができない。だってこのオレだってまだ半信半疑なんだから。もし間違いないことが確実になったら、ちゃんとアイコにもネズミにも話すさ」
金太は隠し事をしていると思われるのを嫌ったのか、少しムキになった口調で話す。
「わかった。金太のことを信用してるけど、ちょっと確認してみたかっただけや」
ノッポは、ずっとほかのメンバーのことが気にかかっていた。
「わかってるよ。さあ、準備にかかろう」
ふたりは小屋の隅に移動すると、それぞれのバッグを抱え、お互いの顔を見合わせたあと、金太は大事そうに携帯電話を取り出し、丁寧にボタンを押した。
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