第10話

 金太は自分が経験してきたことを一気にノッポに話した。

「金太、きみ熱でもあるんやなか?」

 ノッポはまったく信じられないといった顔で金太の額に手を当てる。

「ノッポ、オレが嘘やでたらめをいってるとでも思ってるのか?」

「いや、そげなこつなかけんが、話があまりにも突飛過ぎて……」

 ノッポは困惑の顔をかくせなかった。金太は親友だからなにがなんでも信用したいと思ってはいるのだが、突然ドラえもんの物語に出て来るような話を聞かされてもリアクションに困った。

「よし、ノッポがそこまで信用しないんだったら、これを見せてやる」

 金太は秘密基地の隅の棚からブリキ缶で拵えた宝箱を取り出してきた。この宝箱はメンバーが大切にしているものを入れておく箱だ。

「これを見てみろよ」

 金太は憮然とした顔付きのまま宝箱から紙片を取り出した。

 ノッポは受け取った紙片を慎重に開いて、なかに書いてある文字を読んだ。

「な? オレのいってることが嘘じゃないってわかっただろ?」

「うん」

 返事をしたノッポだったが、正直なところまだ引っ掛かるものがあった。

「なあ金太、ぼくに話したいのはそれだけじゃなかやろ」

「う、うん。やっぱノッポには隠し事はできないな」

 金太はノッポの顔を見ながら頭を掻いた。

「だって、金太の顔に全部書いてあるけん」 

 いわれた金太は慌てて手のひらで顔をこすった。

「で、そのあとの話はなんネ?」

「じつは、今度の土曜日に、この携帯を使ってまたおはるちゃんのとこに行きたいんだ。だってオレ、彼女と約束したんだ、2週間後に来るって……」

「金太ひとりで行けばええやろ。ぼくは別に約束なんかしてなかけん」

「そんな冷たいこというなよ。ノッポはオレの親友じゃなかったのか?」

「親友には違いなかけんが、それとこれとは一緒にならんト」

 ノッポはぷいと横を向いた。

「ははん、さては怖気づいたな、ノッポ」

「そげなことはなか。なんでぼくが……」

 ノッポの本音はやはり怖かった。いくら考えてもそんな経験をしたことがないから想像がつかないし、この時代にちゃんと帰って来られる保障などどこにもないからだ。

「わかった。もうノッポには頼まんから」

 ノッポの気質を知り尽くしている金太は、紙片を取り返しながらいった。

「……」ノッポは黙って下を向いたままだ。

「また連絡するからさ」

 金太はさらに追い討ちをかける。

「わかったよ。で、ぼくはどげんしたらよか?」

 ノッポは諦めたらしく、椅子に座り直し金太の顔を正面に見た。

「それでこそオレのノッポだ。そうと決まったら、これからのことを相談しよう。まずは仲直りのしるしにほら、これ」

 金太は机の引き出しを開けると、しまっておいたかわり玉をふたつ取り出した。

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