第7話

「なんネ? うっとうしかァ」

 ノッポは金太が待っているだろうと、急いで自転車を走らせて来たのに、煮え切らない金太の態度にいささかいらつきを覚えた。

「いま話すから、そんなに急がせるなよ。……これはまだ誰にも話したことがなくて、おまえがはじめてなんだ」

「ぼくがはじめて?」

「ああ」

 金太は真面目な顔をしながらコクリと頭を下げた。

「ばってん、それって隠し事には入らんト?」

「そういえばそうに違いないけど……」

 金太は首を傾げながらノッポの顔を正面に見た。

「それって、ロビンの掟に背くことになるんやなか? まさかロビンの10の掟のなかに『けして仲間同士隠し事をしてはならない。』という条文があるのを忘れたんじゃないやろね」

 ノッポの顔はいつになく険しかった。

「忘れてなんかないさ。だけど、こればかりはアイコにもネズミにも話すことはできない。それくらい大変なことなんだ」

「わかった。金太がそこまでいうんやったらオレも九州男児やけん黙って聞く。だから気にせんで早よう話したらよか」

 ノッポは金太の顔を見て事の重大さを読み取ることができた。

「あのさあ、ノッポ、時代劇って見たことある?」

 金太はなにかを探るかのような顔付きでたずねる。

「あるよ。水戸黄門とか、なんたら犯科帳とか……トウさんやカアさんがようテレビで観とるけん、たまに観ることがあるけど、あんまりようわからん。なんネ、大事な話ってそんなことなん?」

 ノッポは憮然とした顔になって金太にもらったかわり玉を口に放り込んだ。

「違う、違う、そんな話じゃなくて、……じつはこの前ノッポと別れてからなんだけど、この携帯のボタンをあっちこっちいじってて、もう一度おまえの電話番号を押してみたら、とんでもないことが起きてしまったんだ」

「とんでもないこと? とんでもないことってなんネ?」

 ノッポにはいまから金太の話そうとしていることがまったく想像できなかった。

 金太は話を打ち開ける前にノッポに訊いた。

「ところでノッポ、きょう学習塾に行くんだろ?」

「いや、きょうはやめた。だっておまえが話しを聞いて欲しかっていうけん、どうせ長くなると思って……」

「サンキュ。さすが親友だ、恩にきるぜ」

 金太は携帯を机の上に丁寧に置いたあと、ノッポに向かって手を合わせた。

「わかったけん、早よう話ばせんネ」

 金太はうんと頷くと、椅子に座りなおして話はじめた。

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