第7話 出会い
体が膨れ、視界がぼやける。体の周囲が少しゴワゴワする。
何度も経験したこの感覚。なんとなく、これが最後だってことが分かった。
最後の脱皮を経て、成虫になるときだと理解した。
近くには、もう1匹、仲間がいるので離れて脱皮することにした。
(これで、私もついに大人。2か月経たないくらいかな・・・・・・)
メリッ。メリッ。
殻の破れる音ともに、白くスラッと伸びた体が出てきた。
(羽が生えてる!)
体ももう一回り大きくなり、今まで最も違うところ。それは、羽が生えたことだ。
(ん。でも、羽が動かない)
羽が生えたものの、まだ血液も通いきっておらず、思うように動かせない。
(ジッとしていよう)
体の表面が固く、色がつくまでの間、いつもようにジッとする。
周囲に敵が寄ってこないことを祈りながら。
この、身体に色がつくまでの間は、同じ仲間であっても敵だと思う、初めての脱皮で学んだことだった。
無事に体が硬くなった。
殻はもう食べない。餌を自分でしっかりと取れるようになったし、自分の体にも蓄えることができるようになったからだ。
(自分の住処に戻ろうかな)
住処に戻ってきた。いつも一緒にいた仲間はいなかった。
(またどこかに餌でも取りに行ってるのだろう)
周辺で適当に餌と水を取り、住処で休んだ。
ガサガサ。
(ん?)
ガサガサ。
(なんだろう)
物音で目が覚めた。
(あの子が戻ってきていたのかな)
周囲を見渡すと、仲間が戻ってきていた。
そして、仲間も成虫になっていた。
そして初めて、その子の性別が判明した。
雄だった。
生まれて初めて、性別を意識した瞬間だった。
(こんな気持ち、初めて)
私と彼は徐々に近寄り、触角をぶつけた。
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