第6話 危険

 産まれてからかれこれ5回の脱皮を経た。


 自分でも、もうすぐ大人になるんだと分かった。


 私と同じようにニオイにつられて仲間が集まるかと思ったが、私の見つけた場所は穴場だったらしい。


 初めについてきた子以外に、仲間はおらず、ずっと2匹だけで暮らしている。


 暮らしてると言っても、糞のニオイが心地よくて一か所に留まっているだけである。


 しかし、相手に体に触れるのは不快なので、触れない程度の微妙な距離を保っている。このまま接触することはないだろう。


 (さて、またご飯を取りに行こうかな)


 また、以前取りに行ったヒトの住処に侵入する。


 光と風と記憶を頼りに穴を見つけ、穴から出ようとした。


 (ん?)


 穴から出ようとしたところで違和感があった。


 (ニオイが、ない?)


 この穴には、私が今までに付けた糞があり、私にとってとても心地よいニオイがあったのだ。


 それがなくなっている。


 不快に思いながら道を進む。周囲は少しだけ暗く、ヒトの気配はない。


 (なにあれ?)


 目の前にオブジェがあった。


 四方に入り口があり、オブジェ自体は長細い家のような形をしている。


 興味本位で中を覗いてみた。


 (ウッ・・・・・・。なにこれ)


 美味しそうなニオイと同時に、いつぞやニオイを嗅いだことのある死臭を感じた。中には私と同じ姿をした子たちが家の中で捕まり、死んでいた。


 (早くここから離れよう!)


 すぐに離れ、餌を探しに行った。


 (びっくりした。思わず足を踏み入れそうになったけど、あそこは入ったらダメなところだ。たぶん)


 ここはヒトが食事を作るところみたいで、その破片がたくさん落ちている。


 特に、油が落ちているとご馳走である。


 好きなだけ餌を取り、私は再度、住処に戻った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る