第3話 仲間

 (あれ、この子は本当に私たちの仲間なのかな?)


 (ちょっと触覚で確認してみよう)


 (仲間・・・じゃない?)


 これまで、他の子たちを触覚で触れたときは、私たちと同じニオイがした。だから、同じ仲間だと思っていた。


 だけど、この子にはそのニオイがない。脱皮後の殻には同じ匂いがする。だから、殻は私たちの仲間。


 この殻から出てきたこの白い個体は私たちの仲間じゃない。


 そう感じたのは私だけじゃなかった。ほかの子たちも同じことを考えたようだった。


 お母さんまでも。


 (お腹もすいていたし、丁度いいや)


 誰かが、脱皮途中の個体の首元をかじり始めた。暴れている。暴れているが、力があまり出ないようだった。


 そうして、お母さんも交えてみんなで少しずったべた。そして、お腹が満たされた。


 しばらくしてから、その死体にも色が付き始めた。それと同時に仲間と同じニオイが出始めた。


 (どうして、この子は死んでいるんだろう・・・・・・?)


 そして、次に死臭が発せられた。


 (気持ち悪い・・・・・・!)


 (ほかの虫の死体なら全然気持ち悪くないのに、仲間の死体のニオイは気持ち悪い!)


 (早く逃げよう!)


 私たちはその場所から逃げた。仲間が死んだということは、きっと、私たちを食べる敵があそこに来るということなのだろう。


 (新しい住処を探さないと)


 いつの間にか仲間もバラバラになってしまっていた。住処を探しながら周囲をウロウロした。暗闇の中でひたすら徘徊していた。


 チューチュー。チューチュー。


 トコトコトコトコ。


 (え、何今の鳴き声!?)


 物陰に隠れながら、声のする方向を見た。


 暗闇の中で丸い光が2つ、動いていた。ネズミだ。


 (あれに見つかったら危ない!逃げないと!)


 一目見て、アレが私たちの敵であることは分かった。


 ネズミがいる方向とは逆の方に逃げた。


 (どこか安心できるところはないかな・・・・・・)


 しばらく徘徊すると、嗅ぎ覚えのあるニオイにたどり着いた。


 お母さんがいた。お母さんの糞のニオイだ。


 (安心する)


 お母さんと一緒にまた生活をし、そこに糞を溜めていった。すると、他の仲間たちもどんどん集まってきた。


 皆、このニオイにつられてここに集まってくるみたいだった。


 そして、日数が経ち、私たちは3回の脱皮を終えた。

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