第3話リスカしたくなったときに考えること

 「リスカしたい」

急にそう思うことがある。


 でも結局せずに終わる。

何とか自分を抑えて、こらえているのだ。

これまで生きてきてリスカしたことはない。


 リスカしたいなんて思っても、痛いのは苦手で

注射や歯医者は大嫌いだ。

それなのにリスカはしたいだなんて、

自分で自分のことを「馬鹿なのかな?」と思う。


 注射や歯医者と、リスカとの違い。

それは、「他人にされるか、自分でするか」だ。

でもその違いが何だというのだろう。違いを発見したところで、という感じだ。


 もし切ったら、切ったところから血が出て、そのあと

「あ、いたいな……」ってなるんだろうな。

消毒液が傷口にしみるんだろうな。

自分で絆創膏を貼って、それか、傷が大きかったら包帯を巻いて、


自分で自分を傷つけて、自分で自分の手当てをしている


この構図に、自分がやっていることに

あきれて、むなしくなって、また悲しくなって

泣き出すんだろうな。


がんばってお風呂に入ったら、

身体が熱くなって

傷口がかゆくなって

「あのとき切ったからだ」

「切るんじゃなかった」「なんでリスカなんかしたんだろう」

なんて

やったことを思い出して、

また泣くんだろうな。

自己嫌悪におちいるんだろうな。


そういう自分が嫌で、そのことでまた泣くんだろうな。


石けんや水が傷口にしみて単純に痛いのも、きついだろうな。

痛くて痛くて、

でもこの傷をつくったのは自分だ。

でもそうしたのは過去の自分だから今どうにもできない。

泣く。



 今まで、何が腕へのリスカ欲を抑えてきたのかというとそれは


「腕に傷があったら、半そでやノースリの服が着られないよ」

「腕が痛かったら、楽器とか、絵とか文章とかできなくなるよ」


という、自分に言い聞かせる側に立っている自分の心の声だ。


でもそれはどうかな。


それで今自分を抑えられるとは思えない。

なにか、他の新しい理由がほしくなってきた。


病み期に入ると、重低音強化EDMや叫んでるだけのようなロックや

狂気という感じの映像付きのBGMを聞いて

何とか気をまぎらわそうとしてきたけど、

今はもう、音楽が聞きたくなくなってきた。

疲れたのかな。


それともリスカする理由を探しているのかな。


リスカしたいな……

でも、できないんだろうな……

リスカしたいな……

できるのかな……?

できないんだろうな……



リスカしたいな。

私は弱い。


 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る