みによむ・ハイウエストストーリズ

山岡咲美

第1話「カタナビト」

 「お姫様って美人かな?」


貨物船の甲板かんぱんから町を眺めながら善継ヨシツグが言う、その男は腰に一振ひとふりりの太刀たちを差しそれおおううローブを着ていた。

そして打刀うちがたな脇差わきざしを腰に差し、厚みの有るマウンテンパーカーの男が答える。


オレはどうでもい」


地中海の西の外れ砂埃すなぼこりは舞うものの大理石の王宮と日干しレンガの旧市街地、そして貿易でとみを溜め込んだ美しい硝子がらすビルの新市街地が其処そこにはった。


「そうよ、死音シオン俗世ぞくせなんかに興味無いの」


フード付きジャージの男の、チビの雷血ライチが話しに割って入る、腰から垂れた革のベルトからは小太刀こだち二振ふたふりり。


「どうでもはくないだろ!これからつかえる姫だぞ、美人がいに決まってる!」

「それが俗世だとうの、コレだから三白眼さんぱくがんはダメね」

雷血はそう言うと不敵な笑みを浮かべる。

「三白眼の何が悪い!このそばかすチビ!」


「まあまあ御二人おふたりとも喧嘩は良く無いと拙僧せつそうは思うのですぞ」


身長2メートルはあろう法衣ほういのデカおとこが2人を小脇こわきに抱え黙らせる。

「しかしみょうですな、この国でクーデターが起きはや3日、軍用物資を輸送する[民間船]での王都入港」

その男、無僧ムソウは死音へと目をやる、その法衣の男も背丈と同じほど野太刀のだち、つまりかたなを背にしていた。


「そりゃあ決まってる、ぼくらが邪魔じゃまなのさ、だから枢機卿すうききょうは僕らに船で待機と来たんだ」


「何言ってるの善継、枢機卿はウチらのご主人様じゃ無いのよ」


「知ってるさ、でもこの国を牛耳ぎゅうじってるのは枢機卿様だ」

そう言うと3人は死音の方を見る。


「オレは王のめい無しで動く訳に行かない」


3人はコレは駄目だって顔をする。

(死音ってば本当ほんと融通ゆうずうがきかないの、でもスキ!!)


(ハア…)

「その王様がクーデターでヤバイっては話だろうが!も少し頭使ってくれよ死音!!」

善継と死音は赤子あかごの頃からの付き合いだ、だからこそ、この死神の気持ちも解っていた。

きましょう死音殿、今行かねば貴方あなためいを下せる王が居なくなりますぞ」


「王様が居なくなると誰を殺せばいか解らなくなるな…」


そう、彼は殺す者と殺さない者を分けなければいけないと知っては居た、しかし自分ではそれを決められなかった、死音には善悪と概念がいねんが無かったのだ。


「行こう、取りえず命令が必要だ」



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